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アンゴラから登場したジャズ新世代シンガー・ソングライター アナベラ・アヤ [南部アフリカ]

Anabela Aya  KUAMELELI.jpg

アンゴラの新人女性シンガー・ソングライターのデビュー作。
アンゴラとはいえ、センバやキゾンバではなく、
アフロ・ジャズのシンガーというところが、新味の人であります。

アナベラ・アヤは83年ルアンダの生まれ。
5歳の時から教会で歌い始め、将来歌手になることを夢見ていたそうですけれど、
俳優としての才能を見出されて劇団に加入し、
舞台女優として15年のキャリアを積んだという人。
劇団に所属する間、本格的な歌唱レッスンを受け、
この時期にジャズを学んだようです。

演劇の世界から音楽の世界に移り、ジャズのシンガー・ソングライターを志向した
アナベラの音楽性はレコード会社に理解されず、
17年にルアンダの歌謡祭で受賞するも、レコード会社からの引きはありませんでした。
30も半ばになり、3人の子を持つ母親となっていたアナベラは、
歌手デビューする最後のチャンスと、アルバムを自主制作する決心をし、
バー・シンガーとして働きながら資金を作り、昨年デビュー作を完成させたのでした。

そんな遅咲きの人ですけれど、アルバムを出すや否や評判を呼び、
さまざまな賞にノミネート、そして受賞もし、
カーボ・ヴェルデで開かれたジャズ・フェスティヴァルに出演するなど、
アナベラの評価は一気に高まりました。
ウンブンドゥ語で「前進」を意味するデビュー作のタイトル Kuameleli は、
時流に乗らず、自分の音楽を大事に育んできたアナベラの気概が表れています。

芯のあるしっかりとした歌声で、ざっくばらんとした歌いぶりから、柔らかな歌い口、
さらに粘っこい節回しを使ってみたりと、さまざまに表情を変えて歌う技巧派です。
自作の曲のほか、フィリープ・ムケンガ、アルトゥール・ヌネスなどの
曲も歌っていて、アコーディオンやアクースティック・ギターの響きを生かした
オーガニック・テイストのみずみずしいサウンドが胸をすきます。

レベッカ・マーティンやベッカ・スティーヴンスといった、
新世代ジャズのシンガー・ソングライターと共振する同時代性を感じさせる人で、
カミラ・メサやアンナ・セットンあたりが好きな人なら、どストライクでしょう。
昨年12月15日に急死したブラジルの名ベーシスト、
アルトゥール・マイアのベース1本をバックに歌った‘Tic Tac’ などは、
リシャール・ボナのファンにもアピールしそうですね。

ウンブンドゥ語で歌うタイトル曲のほか、クワニャマ語で歌う‘Nangobe’、
ピジンで歌う‘I Love You Bue’、キンブンドゥ語で歌う‘Tia’、
リンガラ語で歌う‘Kaumba’など、多言語使いがアンゴラ人らしい、
新感覚のシンガー・ソングライターです。

Anabela Aya "KUAMELELI" Anabela Aya no number (2018)
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