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フランスの若者が再現するシティ・ポップ アル・サニー [西・中央ヨーロッパ]

Al Sunny  PLANETS.jpg

イントロのギターに、胸がキュンと鳴り、
ハタチの頃にタイム・スリップするような眩暈をおぼえました。
「フランスのネッド・ドヒニー」とはよくぞ言ったものです。
70年代後半、ウェスト・コースト産AORを徹底的に下敷きにしたサウンド。
マイケル・マクドナルドが加入したドゥービー・ブラザーズやボズ・スキャッグスが
街のいたるところで流されていた、典型的「なんとなくクリスタル」時代のBGM。

世界的なAORブームもここまでくりゃホンモノというか、
ジャケットのヴィジュアルなんて、とてもフランス人とは思えませんねえ。
日本先行で出たCDを試聴して、思わず苦笑してしまいましたが、
本国フランスでもCDリリースされたというので、それではと買ってみました。

あの当時のサウンドをてらいもなく再現しているのには、
当時の若者世代には、なんだかくすぐったい気にさせられます。
あの当時と今とでは、時代の雰囲気が180度も違うのを思えば、
自分の息子のような世代の若者が、
あの時代の音楽をリヴァイヴァルさせていることに、複雑な気分にならざるを得ません。

だって、今の20代にこんな音楽をエンジョイする環境なんて、ぜんぜんないじゃない。
車を持ってなけりゃ、デートでドライヴもできないし、
そもそも恋愛にだって、あんまりコミットしてなさそうだし。
なんだか現実味がなくて、いったい誰がどういう気分で聞いてるのか不思議ですけど、
初老のオヤジを喜ばせるサウンドであることは間違いありません(それでいいのか?)。

全編英語詞。フランス人であることをまったく意識させず、
レイト・セヴンティーズまんまの、メロウでブリージンなサウンドを繰り広げます。
プログラミングはいっさい使わず、
本人のギター、鍵盤、ベース、ドラムス、女性コーラスによる生演奏。
ソリーナの響きがあまりに懐かしくって、身がよじれました。
クロスオーヴァー時代を象徴したヴィンテージ楽器が、いまも活躍できるとは。
スキャット入りのインスト・ナンバーでは、フリー・ソウルな感性も嗅ぎ取れ、
なるほど、このテのリヴァイヴァルは、今も脈々と続いているワケねとナットクしました。

Al Sunny "PLANETS" Favorite Recordings FVR159CD (2019)
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