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コモロの庶民感覚溢れるターラブ [インド洋]

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インド洋に浮かぶコモロ諸島は、ザンジバルと同じく、ターラブが歌い継がれてきた島々。
コモロにも魅惑の南海歌謡が眠っている予感は十分するものの、
ヨーロッパのレーベルが制作するCDは、民俗音楽的なターラブばかりで、
大衆歌謡らしいターラブが聞けず、長年の欲求不満なのでありました。

コモロ現地制作のCDなら、
そうした大衆味のあるスワヒリ歌謡を聞けると思うんですけれど、
コモロ盤CDの入手はアフリカの中でも難関中の難関で、いまだ1枚も捕獲ならず。
ずいぶん昔に見つけたネット情報でウォント・リストは作ってあったものの、
入手するチャンスもなく、諦めきっていたのでした。

もはや存在すら忘れかけていた幻のコモロ盤CDですけれど、
つい最近、数枚のCDを入手することができて、舞い上がっています。
見つけたのは、グランド・コモロ島の首都モロニに住所を置く、
スタジオ1というレーベルのCD。
星降る夜にぽっかりと浮かぶ、コモロの由緒あるグランド・モスクをバックに、
イスラーム正装の男たちが描かれているジャケットが、スワヒリ・ムードいっぱいですね。
本作は6人の歌手によるオムニバス盤で、
70年代のヒット曲を再演したターラブ懐メロ・アルバムのようです。

制作年の記載がありませんが、90年代後半頃でしょうか。
コモロを代表する音楽家で鍵盤奏者のサリム・アリ・アミールと
ギタリストの二人によるプロダクションは、
いかにも低予算な作りとはいえ、サウンドは実によく組み立てられています。
ウードや弦セクション、アコーディオン、ベース、ドラムスもすべて鍵盤代用ながら、
このプロダクションは侮れませんねえ。
カジュアルな姿の庶民的なターラブをたっぷりと味わうことができて、嬉しくなります。

6人の男性歌手はいずれも中高年のヴェテランといった感じで、
70年代にオリジナル曲を歌っていた人もいるんでしょうか。
哀歓のこもったスワヒリ演歌あり、コモロ伝統のンゴマありと、カラーの異なる曲が並び、
ローカル感いっぱいのシンセ・サウンドは、ほっこりとした味わいがあって泣かせます。

インドネシアのカシーダやマレイシアのムラユそっくりの曲もあったりして、
70年代のオリジナル・ヴァージョンも聴いてみたくなりますねえ。
最後の‘Ufitina’ のみ、ホンモノのウードと太鼓をフィーチャーしていて、
より往年のターラブらしいアンサンブルを楽しめます。

Mohamed Mattoir, Ahmed Barwane, Youssouf Mze, S. Mohamed Chakir, Nassor Saleh, Seef Eddine Mchangama
"WAZAMANI VOL.1" Studio 1 no number
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