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コモロのモダン・ターラブ サリム・アリ・アミール [インド洋]

Salim Ali Amir  TSI WONO ZINDJI.jpg

30年のキャリアをほこるコモロ音楽のフィクサー、
サリム・アリ・アミールの新作が届きました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-02-07
哲学者のような顔立ちと、瞑想するが如く
静かに目を閉じているポートレイトは、風格を感じさせるもので、
深みのある色合いと相まって、いいジャケットだなあと、しばし眺めてしまいました。

本作で12作目となる新作、
コモロ歌謡に溶け込んだ多様な音楽要素が芳醇な香りを放っていて、
コモロ現地産のモダン・ターラブを堪能できる仕上がりとなっています。

オープニングの‘Watsha Waseme’ は、
ハリージのようなつっかかるリズムが印象的なナンバー。
このリズムはコモロの伝統リズムなのだそうで、ハリージと似たニュアンスがあるのは、
ターラブがアラブ湾岸諸国との交流から生まれたスワヒリ文化を象徴しているとも、
いえるのかもしれませんね。

ロック・ギターぽいリフや、
80年代ポップ・ライのようなシンセ・ソロまで聞けるところは、
近年のアラブ/マグレブ歌謡をも呑み込んでいる証しでしょう。
もう1曲ハリージぽいリズムが聞ける‘Ankili’ では
ターラブぽいメロディを、ウードやカーヌーンをフィーチャーして聞かせていますよ。

60年代アラブ歌謡の色濃い‘Na Andziwa’ の艶っぽい味わいもたまりません。
‘Maskini Mbaba’ ではメロディがインドぽく思えたり、
アコーディオンをフィーチャーした‘Msubuti’ は、ムラユみたいなメロディ
とサレギのようなリズムが聞け、遠くアジアから近隣のマダガスカルまで、
多彩な音楽のミクスチャーが楽しめます。
ラストの‘Ushindzi’ は、なんとエレクトロ仕立てで、ちゃんと現代とも呼応しています。

サリムの深みのある声と諭すような歌いぶりに、ほっこりとした温かみがあって、
現地のプロダクションならではのローカルな味わいと、絶妙にマッチしていますね。

Salim Ali Amir "TSI WONO ZINDJI" Ankili 57/12/19/SAA (2019)
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