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60年代アパラのシングル・コレクション [西アフリカ]

Apala - Apala Groups in Nigeria.jpg

イギリスのレーベル、ソウル・ジャズ・レコーズのナイジェリア熱がスゴイ。
アフロ・ソウル/ファンクばかりでなく、ヨルバの宗教音楽に
フジの編集盤まで出しているんだから、その熱の入れようはホンモノです。
ついこの前なんか、フジの名盤中の名盤、コリントン・アインラの88年作”BLESSING” を
まるまるLPでストレート・リイシューするんだから、もうビックリしましたよ。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-11-04

ソウル・ジャズはクラブ系リスナーへの影響力も大きいレーベルだから、
ナイジェリアのイスラーム系音楽に、新しいファン層が獲得できるかも。
そのうち、若いDJ/ディガーたちがフジ・パーティーなんてイヴェントを始めたりしてね。
来たれ、アパラDJ! なんつーて。

そんなオールド・タイマーの勝手な期待も高まるところなんですけど、
なんとソウル・ジャズが今度は、アパラに手を出しましたよ。
最初にリリース・ニュースを見た時は、「まじかよ」と思わずつぶやいたもんなあ。
ナイジェリア国外でアパラのシングル・コレクションが出るなんて、これが初。
アパラのCDが欧米で出ることじたい、
ハルナ・イショラのIndige Disc 盤以来だから、19年ぶりの快挙です。

選曲がよく練られているんですよね。
アパラを代表するアーティストのハルナ・イショラを筆頭に、
カスム・アディオなど、LP時代以前のシングル盤時代の
アパラのアーティストたちを多く集めているのはもちろんのこと、
アパラを生み出す源となった、ヨルバのドゥンドゥン・ミュージック(15曲目)も
しっかりと選曲しています。

なかでも注目したいのは、アパラのグループが伴奏を務めていた、
女性歌手によるワカ(2・6・12・18曲目)が聞けること。
アパラ風のワカというのは、この時代にしか聞けないものです。
もともとワカはア・カペラで、手拍子だけの伴奏で歌われていたのが、
ドゥンドゥン・アンサンブルが伴奏をつけるようになったのを皮切りに、
50年代にアパラのグループがバックを務め、
やがてアパラからフジに人気が移った80年代以降は、
フジのグループが伴奏を取って代わるようになったんですよね。

また、アパラ周辺の音楽として、ダダクアダ(パンケケ)を取り上げたのも秀逸。
口承芸能のダダクアダの特徴がよく表れた、
かけあいのしゃべくり芸を聞かせる3曲目や、
女性歌手によるパンケケ(14・16曲目)が聞けるのも貴重です。
解説にはパケケと書かれていますが、パンケケの方が一般的。
【追記】2020.4.29
パケンケを称するラリア・アビケという女性歌手もいました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-04-13

選曲・解説は、ぼくは初めて知る名前の、S・ベイカーという人のお仕事。
30~40年代にイジェブ地方でアパラが誕生した頃、
レゴスではArea とかOshugo と呼ばれていた、なんていう初耳情報があったり、
これまでアキン・エウバやクリストファー・ウォーターマンなどの研究者の間で
通説となっていた事柄に、反証なしに異論めいた書きぶりをしているところなど、
気にかかる点もないわけじゃないんですが、
この音楽を初めて知る人への概説としては、十分といえそう。

このコンピレをきっかけに、アパラの魅力を知る、
新しいファン層の誕生を期待したいですね。

Haruna Ishola, Adebukonka Ajao, Rapheal Ajide, R.A. Tikalosoro, Adeleke Aremu, Kasumu Adio, Ayisatu Alabi and others
"APALA: APALA GROUPS IN NIGERA 1967-70" Soul Jazz SJRCD440
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