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アフロビーツ・ミーツ・ハイライフ ミスター・フランク [西アフリカ]

Mr. Frank Solomon.jpg

これぞヒップ・ホップ世代のナイジェリアン・ハイライフ!
こんな痛快なアルバムが7年も前に出ていたのを、
ずっと知らずにいたなんて、不覚でしたねえ。聞き逃しの逸品であります。

アフロビーツはかなりのリリース点数があって、フォローしきれないんですよねえ。
フィジカルにならないデジタル・リリース・オンリーの作品も多く、
注目作をかなり聞き逃しているんじゃないかという焦りを、ずっと持っていましたけれど、
じっさいこういう作品を知ると、やっぱり聞き逃してるんだなあと実感します。
最近ではオルテという新ジャンルも登場して、ますます追いきれないんですが、
アフロビーツもオルテも、ヒット・チャートや
ジャーナリスティックな話題と無縁なところに、面白い作品があったりするので、
キャッチ・アップしていくのはタイヘンです。

さて、とにもかくにも出会えてよかった本作なんですが、
オープニングの‘Ngwo Ngwo’ で、いきなりレックス・ローソンの名曲中の名曲
‘So Ala Temen’ が流れてきて、悶絶。
ノスタルジックなホーン・セクションの響きもイナセなバックトラックにのせて歌う、
ミスター・フランクのキレのあるヴォーカルに、ノック・アウトをくらいました。

レックス・ローソンを知らない若いファンにとっても、このトラックの仕上がりは、
60年代ハイライフの魅力に、きっと目を見開かされるはず。
サンプルをループしたトラックで、曲自体の魅力を引き出しながら、
ヒップ・ホップR&Bセンスのヴォーカルをのせ、
現代的にリフレッシュメントしているんだから、
これ、サイコーでしょう。ちなみにレックス・ローソンのオリジナル録音は、
フィリップスの10インチに収録されていて、
今はプレミア・ミュージックのCDで聞くことができます。

Cardinal Rex Lawson.jpg   Rex Jim Lawson.jpg

60年代ナイジェリアン・ハイライフのクラシックをサンプリングしたこの1曲目で、
はや、ジャケ買いしたのが大正解だったことを確信しました。
実は本作、主役のミスター・フランクのことを何も知りもしないのに、
試聴もせずに即買ったんですけれど、ジャケ買いした理由は、
ジャケットに大きくデザインされた、ナイジャフォンのレーベル。
ナイジャフォンは、ハイライフの熱心なファンにはよく知られる、
ナイジェリア東部オニチャに拠点を置く歴史あるレコード会社です。

61年からイボ人、イジョ人、カラバリ人など東部出身の
歌手やグループのレコードを出していて、ハイライフばかりでなく、
イボの伝統音楽も出しています。おそらく経営者はイボ人でしょうね。
今もナイジャフォンが健在で、アフロビーツをリリースしていたとは知りませんでした。

そのハイライフ名門レーベルにたがわぬ内容なんだな、これが。
続くタイトル曲‘Solomon’ もアフロビーツの意匠をまとっているものの、
メロディはイボ・ハイライフそのもの。
ヒップ・ホップR&B・マナーな歌い口とハイライフのメロディが、
これほど見事に融合しているアルバムは、これまで聴いたことがありません。

本来ガーナのヒップライフが狙っていたのが、こういうサウンドだったはずだけど、
ヒップライフでこんな成功例に出くわしたおぼえがないなあ。
ヒップライフができなかったことを、ミスター・フランクこと、
フランク・エボカが成し遂げちゃいましたね。

オープニングのレックス・ローソンをサンプリングした曲のほかにも、
ミュート・トランペットをフィーチャーしたトラックや、
ハイライフ独特のギター・リックが聴けるトラック、
ほかにもメロディやヴォーカル・ハーモニーなど、
ハイライフのエッセンスがあちこちに取り入れられていて、
それをヒップ・ホップR&Bベースのアフロビーツに変換させているのが痛快です。
ハイライフの臭いがまったくないトラックは、7曲目の‘2 Much Money’ と
11曲目の‘You Know’ くらいのものかな。

ハイライフの魅力をアフロビーツに見事にトレースした大傑作です。

Mr. Frank "SOLOMON" Nigerphone NXLP041 (2013)
[10インチ] Cardinal Rex Lawson and His Mayor's Band of Nigeria "REX LAWSON'S VICTORIES" Philips PR13408
Cardinal Rex Lawson and His Mayor's Band of Nigeria "CARDINAL REX JIM LAWSON" Premier Music KMCD006
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