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マンデ・ロック・ギタリスト ウマール・コナテ [西アフリカ]

Oumar Konaté  I LOVE YOU INNA.jpg

クレモント・ミュージックから順調にアルバムをリリースしている
マリのギタリスト、ウマール・コナテの5作目を数える新作。
着実に実力をつけてきたことを感じさせる力作です。

そういえば、これまでウマール・コナテを一度も取り上げてこなかったので、
ちょっとここで、総ざらいしておきましょうか。
ウマールがインターナショナル・デビューを果たした
クレモント・ミュージックからの第1作が、14年の“ADDOH”。

Oumar Konate  ADDOH.jpg

ドラムスとベースのリズム・セクションで強化したマンデ・ポップを、
80年代のワールド・ミュージック・ブーム時代のサウンドとは、
明らかに異なった文脈でロック化したサウンドが新鮮でした。
「明らかに異なった文脈」というのは、
幼い頃から伝統的なマンデ音楽とロックを並行して聴いて育った世代にとって、
マンデの訛りのあるグルーヴを、ロックの割り切ったビートと共存させるスキルが
自然に備わっていることを感じさせるからです。

もちろん、ジミ・ヘンドリックスの影響を明らかにするアフリカ人ギタリストは、
もっと上の世代にもいたわけですけれど、そうしたロック感覚を所与のものとするには、
もう少し時間がかかったということなんじゃないでしょうか。
ちょうど、ヒップ・ホップを聴いて育ったジャズ・ミュージシャンが、
ジャズのリズム・センスをがらりと更新してしまったのと同じように。
こうしたロック・センスの咀嚼は、ギネアのモー!クヤテにも感じましたけれど、
90年代世代が獲得したものといえそうです。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-10-10

“ADDOH” では、ボストンのデボ・バンドのホーン・セクションも加わるなど、
多数のサポート・ミュージシャンを曲ごとに迎え、ロック・サウンドの
引き締まったリズムにのせて、ウマールが力のあるヴォーカルとともに、
キレのいいギターを聞かせていましたね。
その一方、ンゴニやソクを加えたアクースティックなスタイルや、
シディキ・ジャバテのコラとエレクトリック・ギターでデュオをするトラックもあり、
さまざまなフォーマットで個性を披露できる力を、この時すでに発揮していました。

Oumar Konaté  MAYA MAYA.jpg

16年の2作目“MAYA MAYA” では、スリー・ピースのギター・バンド・スタイルで制作。
曲によってオルガンやスティール・ギターも加わるものの、
小編成のバンド・サウンドで、小気味よくギターを鳴らしていました。
かなりトリッキーなソロを披露するなど、攻めの姿勢もたっぷり見せていましたね。

Oumar Konaté  LIVE IN AMERICA.jpg

そして、14年のアメリカ・ツアー時にレコーディングしたライヴ盤が、
17年に“LIVE IN AMERICA”。過去2作のレパートリーを、
2作目と同じベース、ドラムスのスリー・ピースで演奏。
スタジオ・アルバム以上にギンギンのハード・ロック・スタイルのギターで、
ヴォーカルも肩に力が入りすぎているキライがあるんですが、
エネルギーをほとばしらせたツバの飛ぶような歌いっぷりは、胸をすきます。
ドラムスがカラバシに替えてプレイする、
後半のアクースティック・セットとの硬軟使い分けも鮮やかです。

翌18年には、地元バマコでのライヴ盤を続けて出しました。
全曲新曲という意欲作ではあったんですが、ぼくはこれパスしちゃったんだな。
シャラン、シャランと軽い音色を奏でる、キーボードのプレイが、どうも耳ざわりで。
1・2作目でオルガンを弾いていたプロフェッサー・ルイは良かったのに、
なんでメンバー替えちゃったのかなあ。

そして、今作の“I LOVE YOU INNA” は、
余裕も感じさせる仕上がりとなりました。
レゲエ/ダブをミックスした‘Almounakaf’ のフレッシュな仕上がり、
‘Badje Bisinndje’ でジャズぽいピアノをフィーチャーした新機軸も、成功しています。

Oumar Konaté "I LOVE YOU INNA" Clermont Music CLE025 (2019)
Oumar Konate "ADDOH" Clermont Music CLE009 (2014)
Oumar Konaté "MAYA MAYA" Clermont Music CLE0014 (2016)
Oumar Konaté "LIVE IN AMERICA" Clermont Music CLE017 (2017)
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