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カリブで再定義されたマリオン・ブラウン ジョナサン・ジュリオン [西・中央ヨーロッパ]

Jonathan Jurion  LE TEMPS FOU  THE MUSIC OF MARION BROWN.jpg

そういえば、ジョナサン・ジュリオンのアルバムを取り上げていませんでしたね。
ジョナサン・ジュリオンは、フランス、パリの南に位置する
イヴリー=シュル=セーヌで生まれ、グアドループで育った若手ジャズ・ピアニスト。

フランスのジャズ・ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニの影響を受ける一方、
アラン・ジャン=マリーやマリオ・カノンジュといったビギン・ジャズのピアニストから
多くを学んだというジョナサン。高校時代にドラムスのアルノー・ドルメンと出会って、
フランシス・フォートライと初のトリオを結成したといいます。

アルノー・ドルメンのデビュー作には、グウォ・カの影響は聴き取れませんでしたけれど、
ジョナサン・ジュリオンの本作ではカ(大太鼓)奏者が参加して、
グウォ・カのさまざまなリズムを押し出し、
アルノーもグウォ・カのリズムをトレースしたドラミングを聞かせています。

本作がユニークなのは、マリオン・ブラウンの曲集ということで、
85年生まれという若いジョナサンが、どうやってマリオン・ブラウンと出会ったのか、
興味がわきますねえ。だいたいピアニストで、マリオン・ブラウンの楽曲に
挑戦した人なんて、これまでいたっけか?

マリオン・ブラウンは、フリーや前衛というラベリングのせいで、
実像とは少しずれた評価をされてきた人と、ぼくは受け止めているんですけれど、
カリブ由来のリズムでマリオン・ブラウンを捉え直そうという視点は、
多角化した現代のジャズらしいフレッシュさを感じて、とても共感できます。

その試みは見事に成功していて、
オープニングの74年の‘Sweet Earth Flying’ では、
オリジナルにはなかったポリリズムの実験が繰り広げられています。
66年の代表曲‘Capricorn Moon’ を取り上げてくれたのも、嬉しいなあ。
マリオンらしいおおらかな曲で、当時これがどうしてフリー・ジャズ呼ばわりされたのか、
本当に理解に苦しむんですけど、カリブの陽性のリズムと相性バッチリですね。

ベースにはマルチニークの名手ミシェル・アリボが参加しているほか、
シャープに切り込むアルト・サックスにも引き込まれました。
(クレジットにはテナーとあるけど、これはどう聞いたって、アルトでしょ)
ジョウィー・オミシルというこの人、ハイチ系カナダ人だそうです。
アフロ・カリビアンのリズム・アプローチで、マリオン・ブラウンを甦らせた傑作です。

Jonathan Jurion "LE TEMPS FOU: THE MUSIC OF MARION BROWN" Komos KOS006CD (2019)
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