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ワスルへ還る声 ウム・サンガレ [西アフリカ]

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世界的な成功を果たしたマリを代表するシンガー、ウム・サンガレの新作は、
ポンコツだった前作“MOGOYA” のリヴェンジ・アルバム。
なーんて書いたら、ご本人に叱られますかねえ。
17年に出た“MOGOYA” 全曲をアクースティック・スタイルで再録音し、
さらに91年のインターナショナル・デビュー作“MOUSSOLOU” で歌った
‘Diaraby Nene’ と、93年の名作“KO SIRA” で歌った‘Saa Magni’ の2曲を
再演して、追加したのが今作。

前作は、余計な音を重ねすぎているばかりでなく、
リヴァーヴを利かせすぎた女性コーラスなど、音処理にも首をひねるところが
あっちこちにあって、大不満だったんですよねえ。
シンセサイザーやエレクトリック・ギターの音が大きすぎて、
主役のウムのヴォーカルが引っ込んでいるバランスの悪いトラックもあったりして、
エンジニアリングのダメっぷりに、怒り心頭でした。

おそらくウムも、前作の出来に満足してはいなかったんでしょう。
こんなアンプラグド・ヴァージョンを制作するくらいなんだから。
今回はカマレ・ンゴニ、ギター、二人の女性コーラスに、
曲によりオルガンとチェレスタを弾き分ける仏人が加わるだけの
シンプルな完全アクースティック編成で歌っています。

スカしたリミックスを施していた、前作のタイトル・トラック‘Mogoya’ も見違えましたよ。
ギンバ・クヤテの流麗なアクースティック・ギターにのって、
ナチュラルな女性コーラスとともに歌うウムの抑えた歌唱が、
静かな力強さを伝えています。
初期の曲‘Diaraby Nene’ ‘Saa Magni’ を再演したのも、
ウムの原点であるワスルへ回帰しようという意気を感じます。
なにより前作とは比べものにならない、ウムの気合の入った歌いっぷりに、
それがよく表れているじゃないですか。

Oumou Sangaré "ACOUSTIC" No Format! NOF47 (2020)
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