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ヘイシャン・プリースティスが歌うブルース・ロック ムーンライト・ベンジャミン [カリブ海]

Moonlight Benjamin  SIMIDO.jpg

あれれ、新作もちゃんとフィジカルが出てたんですね。
前作をバンドキャンプで購入した時、新作はダウンロード販売のみだったので、
てっきりCDは出ていないとばかり思っていました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-10-20

前作のヴードゥー・ロック路線をさらに磨き上げたこの新作、
ムーンライト・ベンジャミンの吹っ切れた歌いっぷりがスゴイ。
アンジェリク・キジョを思わす強靭なヴォーカルが、耳に突き刺さります。
声は強くても、歌い回しはキジョのような固さがなく、柔軟なところがいいですね。
フランスのジャーナリズムは、ムーンライトに、
「ハイチのパティ・スミス」という形容を与えています。
ちなみにムーンライト・ベンジャミンという名は、ステージ・ネームではなく、
生後まもなく預けられた孤児院の牧師に名付けられたものだそうです。

前作からバンド・メンバーが交代して、
ベースとパーカッションのハイチ人二人が抜けたんですね。
パーカッションが不在になったかわりに、ギタリストが一人増えて、
全員フランス白人のフォー・ピース・バンドとなりました。
サウンドはまるっきり70年代の、シンプルなブルース・ロックで、
ローファイにしたりすることもなく、サウンドはクリーン。

悲惨な生活を送る庶民の窮乏に見て見ぬふりをする、
ハイチの支配階級を糾弾した1曲目の‘Nap Chape’をシングル・カットしたように、
ムーンライトは、困窮するハイチの人々に向けて歌っています。
ハイチの人々の助けとなるために、天使や精霊に呼びかけ、
ラスト・トラックの‘Kafou’ で、ブードゥー神のなかでもっとも重要なロアの
パパ・レグバの化身を歌うところにも、ムーンライトの思いの強さが伝わってきます。

前作では、フランス語で歌った曲も一部ありましたが、
今回はすべてクレオール語で通していて、
ヴードゥー・プリースティスの気迫のこもったブルース・ロックに胸が熱くなりました。

Moonlight Benjamin "SIMIDO" Ma Case Prod MACASE026 (2019)
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