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ブラジル女性、蜂起せよ リマス&メロジアス [ブラジル]

Rimas & Melodias.jpg

タッシャ・レイスの新作の記事に寄せてくれたAstral さんのコメントで、
初めて知ったリマス&メロジアス。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-10-04
15年にサン・パウロで結成された、歌手、ラッパー、DJの
女性7人によるコレクティヴなんですが、
17年に出した7曲入りデビューEP、これスゴイですね。

ヒップ・ホップ、R&B、ネオ・ソウル、ファンク、ハウス、トラップが混然一体となった
トラックメイキングが聞かせるんです。キャッチーなメロディに親しみをおぼえつつ、
とてつもなく実験的なコンセプトを繰り出してくるプロダクションに圧倒されました。
ブラジルのヒップ・ホップやR&Bを、そんなに熱心に聴いているわけじゃないので、
ぼくが知らないだけなのかもしれませんけど、
これほどハイ・レヴェルな作品は、MPB周辺にはなかったように思います。

ユニット名の「リマス」とはライム、韻のこと。
「韻とメロディ」のその名のとおり、オープニングの‘Rimas & Melodias’ から、
ヴォイスとフロウとメロディがビートと複雑に交叉するという、スリリングなトラック。
異なるルーツを持つメンバーそれぞれの幼少期の記憶をたどったという‘Origens’ は、
そのままブラジルの多様性を示したトラックで、エレクトロ・ヒップ・ホップから
ディープ・ハウスへシームレスに繋がり、
さらにビートが転換する秀逸な構成となっています。
途中で南無妙法蓮華経まで飛び出すのは、日系ルーツのメンバーもいるんでしょうか。

リマス&メロジアスは、ブラジル社会における女性の地位、
とりわけ黒人女性の存在感を高めることを目的とする
ブラック・フェミニズムを標榜していて、人種差別、犯罪、女性に対する暴力、
女性のエンパワーメントなどをテーマとしているとのこと。
ビヨンセが‘Flawless’ で、ナイジェリア人作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの声を
サンプリングしたのにインスパイアされ、左派系雑誌カルタ・キャピタルのコラムニストで、
著名なフェミニストのジャミラ・リベイロを起用したのにも、
メンバーの政治意識が発出しています。

気がかりなのは、これほどの力作EPを17年に出しながら、
その後フル・アルバムが出ていないこと。
女性蔑視、人種差別主義者のボルソナールが大統領になった今こそ、
彼女たちの蜂起を期待したいですね。
メタ・メタなんかとコラボしたら、爆発的な化学反応起こすんじゃないかな。

Rimas & Melodias "RIMAS & MELODIAS" no label R&M2017 (2017)
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