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デビュー作は大学生 ナンシー・ヴィエイラ [西アフリカ]

Nancy Vieira  NOS RAÇA.jpg

カーボ・ヴェルデでぼくが一番好きな女性歌手が、ナンシー・ヴィエイラ。
18年に出た新作は、ちょっと物足りなくて、取り上げなかったんですけれど、
偶然に発見したデビュー作が思いのほか良かったので、書いておこうかなと。

表紙にヴィエイラの文字がなかったので、うっかり見落とすところでした。
バック・インレイに映るナンシーの顔も別人に見えて、
え? これ、本当にナンシー・ヴィエイラのデビュー作なの?と疑っちゃいました。
正面からフラッシュを当てた写真は、まるでシロウトが撮ったようなショットで、
ハレーションで顔の肌が飛んでいて、白人女性のようにしか見えません。

しかし、家に帰ってCDを聴いてみれば、
流れてくる声は、まごうことなきナンシー・ヴィエイラ。
この当時、ナンシーはまだ二十歳の大学生だったんですよね。
友人が出場するコンテストに一緒に参加したところ、
なんと友人でなくナンシーが優勝してしまい、
コンテストの賞としてデビュー作を制作したという話を、
13年に来日した時のインタヴュー記事で読んだおぼえがあります。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-08-04

シャイな性格もあって、人前で歌う経験もほとんどないまま、
トントン拍子で第1作が完成するも、プロになる心の準備はできておらず、
その後結婚と出産が重なったこともあり、
ほとんど音楽活動をすることもないまま、過ごしていたんだそうです。
ようやく2作目を制作したのは8年後でしたが
その時もまだ、アマチュアの延長のようなものだったとナンシーは語っています。

Nancy Vieira  SEGRED.jpg

しかし、その2作目ですでにナンシーらしい歌声を発揮していたのを、
ぼくは知っていただけに、デビュー作は楽しみでした。
で、やはりというか、デビュー作の時から、
ナンシーはすでにナンシーだったんですねえ。
肩の力の抜けた自然体の歌いっぷりは、ナチュラルそのもの。
この素直さがナンシーの良さですよ。

レパートリーは、モルナやコラデイラといった、
伝統的なカーボ・ヴェルデ歌謡オンリーで、
ハタチの大学生らしからぬ、シブい選曲です。
ポップスにはまるで関心がなかったというナンシーらしい選曲で、
レコーディングが実現できたんですね。

一部シンセサイザーも使われるものの、さざ波のようなカヴァキーニョのリズムに、
柔らかな海風を運んでくるようなピアノの調べ、バンドリンの奥行きのある響きなど、
アクースティックなサウンドを生かした風通しの良いプロダクションが、
爽やかなナンシーの歌声を守り立てています。

生硬さの残る歌声がウイウイしい、
カーボ・ヴェルデ愛に溢れた、美しい作品です。

Nancy Vieira "NOS RAÇA" Disconorte CD1076 (1996)
Nancy Vieira "SEGRED" Sons D’Africa CD599/07 (2004)
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