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南ア大衆音楽史を消化した4人組 アーバン・ヴィレッジ [南部アフリカ]

Urban Village  UDONDOLO.jpg

ノー・フォーマット!初の南アのアーティストというのも、なるほどです。
従来の南アのグループにはなかった、センスの新しさを感じさせます。

フランス人好みの洗練された音楽性が、このレーベルのカラーだから、
アフリカ音楽の野趣な魅力はもちろん求められませけれど、
グローバルなポップスのスキルを引き寄せて、
多彩な南ア大衆音楽をハイブリッドに再構築した展開が聴きものです。

アーバン・ヴィレッジは、ソウェト出身の4人組。
アパルトヘイトの末期に生まれた彼らは、暗く重い幼い時代の記憶を忘れさせる、
新生南アの時代に誕生したハウスやクワイトなど、さまざまなダンス・ミュージックに
夢中になり、エレクトロの道を歩んだ世代の若者でした。

その一方、幼い頃に染みついたンバクァンガやマスカンダなど、
ソウェトで育まれた大衆音楽やズールーのポップスに、
先祖代々の儀式で演奏された伝統音楽のリズムを結び付け、
まったく新しい音楽を作ろうと考えたと、
リーダーのギタリスト、レラート・リチャバは語ります。

オープニングの‘Izivunguvungu’ は、ンビーラとフルートの反復フレーズで始まり、
子守唄を思わすいかにも南アらしいメロディで、冒頭から頬がゆるみます。
古いクウェラをモチーフにしたようなメロディと、
反復フレーズが生み出すデリケイトなサウンドの組み合わせが、とても新鮮。
さらに、サックスとピアノがサウンドの隙間に音を置いていくような演奏をしていて、
ソロという形式を取らないアレンジも、ユニークですねえ。

続く‘Dindi’ は、往年のマッゴナ・ツォホレ・バンドを彷彿させるンバクァンガで、
生のリズム・セクションにプログラミングのヘヴィーなスネアの打音を加え、
電子音まで飛び交います。21世紀のンバクァンガといった仕上がりが、イマっぽいですね。
3曲目‘Ubaba’ のヴォーカル・ハーモニーには、イシカタミヤを思わせ、
4曲目‘Ubusuku’ は、トニー・アレンを思わす弾むドラミングにも耳を奪われます。
途中サックスが絡んでくるパートになると、ルースなアフロビートのようで面白いですね。

マスカンダふうのギターに始まる5曲目‘Madume’ は、
コーラス・パートでチェロが雪崩を打つようなラインを弾いたり、
フルート・ソロのバックで優雅なストリング・セクションを配したりと、
この曲のアレンジもユニークです。
6曲目‘Sakhi Sizwe’ は、ヴジ・マーラセラを思わせるンバクァンガ。
ごきげんな南ア・クラシックの7曲目‘Marabi’ は、ソロモン・リンダの‘Mbube’ に、
ドロシー・マスカの‘Yombela Yombela’、反アパルトヘイト運動のアンセムとなった、
ストライク・ヴィラカジの‘Meadowlands’ までが引用されています。

ハネるリズムと三連符でつっかかるビートが印象的な8曲目の‘Umuthi’ は、
オルガンやギターが効果的。11曲目‘Empty K-Set’ は、
サックスとハーモニカのハーモニーがジャイヴィーなサウンドを奏でるマラービで、
シェビーンでの愉快なダンスを思わせるユーモラスなメロディと、
露天商のかけ声と鉄道のアナウンスがコラージュされます。

過去の遺産と現代のスキルをミックスしたメンバーのクリエイティヴなアイディアに加え、
全曲をアレンジしたフランス人ミュージシャンも、
本作のサウンド・メイキングに大きな役割を果たしたと思われる、
南ア新グループのデビュー作です。

Urban Village "UDONDOLO" No Format! NOF49 (2021)
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