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ブルキナベのマンデ・ポップ カディ・ジャラ [西アフリカ]

Kady Diarra  BURKINA HAKILI.jpg

グリオ出身のブルキナ・ファソ人歌手、カディ・ジャラの新作がいい。
04年にデビュー作を出し、09年の2作目以来、12年ぶりとなる新作です。
最近すっかり聴く機会が減ってしまったマンデ・ポップですけれど、
ひさしぶりの快心作じゃないですか。

ブルキナ・ファソでマンデ・ポップというと、
不思議に思う人がいるかもしれませんけれど、
カディ・ジャラは、ブルキナ・ファソのマンデ系主要民族のブワに属するブワバ人。
ブワは、ブルキナ・ファソ中央部とマリ南東部の広い地域に暮らす30万を超す民族で、
ブワバは人口4万6千人ほどのブルキナ・ファソの民族です。

ブワといえば、神話に登場する動物の精霊をかたどった、
幾何学模様のマスクが有名ですね。
わが家の玄関を開けると、
正面にブワのパピヨンのマスクが鎮座していて、出迎えてくれます。
横幅1メートル20センチもある、大きなマスクです。

Bobo mask Papillon.jpg

で、そのブワのサブ・グループであるブワバ人のカディ・ジャラは、
ブルキナ・ファソ西部の都市ボボ=ジュラッソの生まれ。
その後、コート・ジヴォワールへ引っ越し、
アビジャンのブルキナベ・コミュニティで育ちました。
そのため、母語のブワ語以外に、コート・ジヴォワールのジュラ語、
母親の言語であるバンバラ語、ブルキナ・ファソの主要言語のモレ語に
公用語のフランス語を使うマルチリンガルとなり、本作でも5つの言語で歌っています。

イッパツでグリオとわかる、この声がたまらなくイイんですねえ。
この声だけで、ゴハン3杯いけちゃうみたいな。
伴奏は、甥のムサ・コイタのベース、
サンバ・ジャラのジェンベやカラバシなどのパーカッションに笛、
マブロ・スミファ・ジャラのバラフォンにンゴニ、
娘のアセトゥ・コイタがバック・コーラスと親族中心のメンバーに、
フランス人ギタリストが二人加わっています。

一人はマヌーシュ・スウィングのグループ、レ・ドゥワ・ド・ロムのギタリストの、
オリヴィエ・キクテフで、前作からの付き合いですね。
‘Mougnoun’ のジャズ・テイストなソロ・ワークに、
オリヴィエの持ち味が発揮されています。
そしてもう一人が、モリ・カンテやパパ・ウェンバなど、
多くのアフリカのミュージシャンとの共演歴を持つティエリー・セルヴィアン。
アフリカ音楽のスキルとセンスを持ったギタリストで、
本作でも曲に応じてロックやルンバからヒントを得た
多彩なスタイルのギター・プレイを披露しています。

ブルキナ・ファソらしくバラフォンを中心に据え、ハチロクのグルーヴあり、
ロック的な8ビートあり、ルンバから借りたリズムありと、
ブラッシュ・アップされたマンデ・ポップがすがすがしいじゃないですか。
ラストの、ハードなギターと笛が交錯するマンデ・ロックもカッコいい。
フランスへ移住してすでに20年になるカディ、COVID-19封鎖期間中に、
アルデーシュの自宅でレコーディングしたという本作。
どんな演奏にも淡々とシブいグリオ節を聞かせていて、クールです。

Kady Diarra "BURKINA HAKILI" Lamastrock LAM114385 (2021)
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