SSブログ

香港の60年代ワールド歌謡 潘迪華(レベッカ・パン) [東アジア]

潘迪華 Diamond.jpg   潘迪華 EMI Pathe.jpg

世界中のヒット曲を歌うカヴァー歌手として人気を集めた、
香港のレベッカ・パンの60年代の名作群が、
オリジナルのままCD化されているの、知っていました?
『レコード・コレクターズ』で2か月にわたって記事を載せたんですが、
拙ブログの読者は雑誌を読まない方が多いので、こちらでも紹介しておきますね。

レベッカ・パンは上海に生まれ、戦後香港へ渡って歌手デビューした人。
のちに大女優となって成功を収めますけれど、パン・ワン・チン名義で、
60年の大晦日に発売されたデビュー作の『與世界名曲』は、
彼女を一躍スターダムに押し上げました。

このデビュー作は、紙ジャケ仕様の「復黑版」シリーズで一度CD化されましたが、
今回は61年の第2作『Oriental Pearls』、63年の第3作『我的心』、
64年の第4作『我愛你』、65年の第5作『潘迪華唱』の5作まとめてボックスCD化。
かつて『世界名曲』という秀逸なタイトルで編集盤が出ましたけれど、
そのオリジナルがすべて聞けるようになったのは、嬉しいかぎりです。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2009-12-07

香港で60年頃に設立されたダイアモンド・レコードは、
香港に洋楽ポップスを根づかせた代表的レーベルで、
レベッカ・パンはレーベルの看板歌手でした。
アメリカン・ポップスから、ラテン、ボサ・ノーヴァ、シャンソン、
カンツォーネに日本の童謡や歌謡曲まで、
ラウンジーな伴奏にのせて、世界中のヒット曲を歌ったんですね。
「蝶々さん」「ラサ・サヤン」「ブンガワン・ソロ」
「ウシュクダラ」といったノベルティ色豊かなレパートリーが楽しいったら、ありません。

64年には、イギリスEMIと初の香港人歌手として契約し、
百代唱片(パテ)からアルバムを出します。
このパテ時代に残した67年作『給我一杯愛的咖啡』と、
68年作『男歡女愛』がCD化されました。もちろん初CD化ですよ。
写真のスリップ・ケースに、ジュウェル・ケース仕様のCD2枚が収まっています。

今回CD化された2作には、ダイアモンド時代のヒット曲の再演も収録されていて、
ダイアモンド時代のラウンジーな伴奏から、
ビッグ・バンドによるゴージャスなサウンドに変わっています。
そのため、初演時のエキゾ感が薄れ、ポップス色が強くなっていて、
同時代のカテリーナ・ヴァレンテやザ・ピーナッツと似たイメージになりましたね。
今回調べて気付いたことですけれど、世界中の曲をマルチリンガルで歌って
50年代半ばに一世を風靡した、フランス人歌手のカテリーナ・ヴァレンテと
レベッカ・パンは、同じ31年生まれだったんですね。

ワールド歌謡は、世界一周旅行が夢見られた時代の要請だったのかもしれません。
68年作『男歡女愛』のタイトル曲は、フランシス・レイの「男と女」。
中国語ナレーションの色っぽい掛け合いは、さすが女優ですねえ。
「骨まで愛して」も歌っていますよ。

潘迪華 東西一堂.jpg

さて、最後に、19年に出たベスト・アルバムについても書いておこうかな。
上で書いたダイアモンド時代の編集盤『世界名曲』は、選曲が秀逸で、
ケースや解説の丁寧な制作が忘れられない名コンピレでしたけれど、
19年に500部限定で出たベスト盤は、60~64年のダイアモンド時代(M1-10)、
65~68年のEMI時代(M11-17)、65年ライフ録音(M16)、
70年サウンズ・オヴ・アジア録音(M18)、2003年ライヴ録音(M19)を収録した、
レベッカ・パンの全キャリアを振り返った編集内容となっています。

28ページのライナーには全曲歌詞、クレジット、往年の写真がたんまり掲載され、
丁寧な仕事ぶりは申し分ありません。
難を言えば、500部限定という大歌手にあるまじき僅少さで、
すでに入手困難なレアCDになっているみたいですが、ファン愛蔵盤の一枚といえます。

潘迪華 (Rebecca Pan) 「鑽石之星」 Diamond/Universal 0846893 (1960-1965)
潘迪華 (Rebecca Pan) 「給我一杯愛的咖啡/男歡女愛」 EMI/Pathe/Universal 8888334/5 (1967/1968)
潘迪華 (Rebecca Pan) 「東西一堂 MY HONG KONG」 Universal 7714091 (2019)
コメント(0)