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ブラジル黒人女性の輝き ジュリアーナ・リベイロ [ブラジル]

Juliana Ribeiro  Preta Brasieira.jpg

ステージ映えする声、と形容すればいいんでしょうか。
ミュージカルにどハマリしそうな、素晴らしい歌声の持ち主ですね。
サルヴァドール出身のジュリアーナ・リベイロは、
サンバ・ダンサーからアフロ・ブロコの名門イレ・アイエのシンガーに抜擢され、
キャリアを積み重ねてきたというシンガー。

まろやかな発声とふくよかな声質という資質に恵まれて、
声量、コントロール、アーティキュレーション三拍子揃ったヴォーカル・ワークは、
完璧というほかありません。

裏山のサンビスタのように、音程も怪しげな生活感あふれる歌声に
グッとくる自分には、完璧すぎて、もっとも縁遠い歌声なんですが、
ぐいぐい引き付ける説得力豊かな歌唱には、抗しがたいものがあります。
ジュリアーナ・リベイロのサイトを見ると、
「2007年に始まった彼女のソロ活動は、大きな舞台でのパフォーマンスが特徴です。」
とあり、やっぱり、と思いました。

新作のタイトルは、ずばり『ブラジル黒人』。
いみじくもそのタイトルが示すとおり、
サンバ、ルンドゥー、マシーシ、ジョンゴ、バイオーン、ショッチ、マラカトゥなどなど、
ブラジル黒人のアイデンティティを、女性の立場から誇り高く歌い上げています。
伝説の黒人女性サンビスタ、クレメンチーナ・ジ・ジェズースに
オマージュを捧げた曲があるのが象徴的ですね。
ナラ・レオンの伝説的なショー「オピニオン」のテーマ‘Carcará’ を、
アフロ・キューバンな解釈でカヴァーしたのが、アルバムの白眉といえそうです。

バイーア・サンバの重鎮リアショーン作の‘Panela No Fogo’ では、
チューバを使ったアレンジによって、マラカトゥが持つ野趣な味わいと現代性を
同時に実現していて、これもアルバムの聴きものとなっていますね。

このアルバムは、ジュリアーナの初の出産をまたいで制作されたそうで、
臨月のお腹をさらした衣装をまとってステージで歌う写真がライナーに飾られ、
CDのディスク面には、臨月のお腹に両手を添えた写真がデザインされています。
そうして誕生した赤ん坊の声を挿入した‘Sonora’ は、
ジュリアーナのご主人でシンガー・ソングライターのセーザル・バティスタによる作曲で、
セーザルもゲストで歌っています。

最初にこの曲を聴いたとき、イントロの大仰なオーケストレーション・アレンジに、
違和感を覚えたんですが、曲の背景を知ってナットクしました。
パンデミック下で出産を経てアルバムを制作した、
ブラジル黒人女性の逞しさと豊かな母性が輝いています。

Juliana Ribeiro "PRETA BRASILEIRA" no label RB103 (2021)
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