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伝統と現代を拮抗させて フェミ・ソーラー [西アフリカ]

Femi Solar  Spot On.jpg

ここのところずっと1年遅れで聴いている、ナイジェリア、ジュジュのフェミ・ソーラー。
前作“HIGHRISE” を記事にしたとき、すでに現地では本作“SPOT ON” が発売済。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-04-10
昨年のミュージック・マガジン6月号で、深沢美樹さんがレヴューされていて、
配信で聴けはしたものの、ようやくフィジカルCDが手に入りました。

前作は、人気ラッパーをゲストに迎えて、
アフロビーツをやるような変化球がありましたけれど、
今作はジュジュ直球6番(曲)勝負のアルバムとなっています。

4曲目をのぞいて、細かい譜割りのメロディと、軽やかにホップするリズムを特徴とする、
フェミ・ソーラー十八番のジャサと呼ぶスタイルのジュジュ。
4曲目だけはテンポをやや緩め、キーボードがゆったりとリフを弾く、
キング・サニー・アデとよく似たタイプのジュジュで、要所要所に低い声で
♪アーッ!♪ と、短い感嘆符のようなかけ声をかけるところなんて、
アデそっくりですね。

それにしても圧巻なのは、ジャサ・スタイルの曲ですね。
トーキング・ドラムのアンサンブルとドラムスのキメ、
ギターとサックスがユニゾンでキメるフレーズが、ますます複雑精緻になり、
これまで以上にスピード・アップしています。
なんかもうこのキメって、全盛期のカシオペアみたいじゃない?
そういや、カシオペアはデビュー当初、
「スリル・スピード・スーパー・テクニック」をウリにしていたけれど、
それはそのまんま、フェミ・ソーラーのジュジュにもあてはまるような。

さて、今回気になったのは、フェミのヴォーカルやコーラス隊とは別に、
フェミのヴォーカルにちゃちゃを入れるように、かけ声をかけている人物の存在。
これまでのフェミのアルバムにも登場していましたけれど、
ルンバ・ロックのアニマシオンみたいな、
なんかしゃべくってるヤツがいるくらいにしか認識してませんでしたが、
かけ声とか合いの手とは、別物のように思えてきたんですね。

今作を聴くと、単なるかけ声ではなく、
明らかにドラム・ランゲージ(太鼓ことば)をしゃべっていると思われる場面が
ちょくちょく出てくるんですよ。
トーキング・ドラムのフレーズ、すなわちドラム・ランゲージをしゃべった後に、
トーキング・ドラムが追随する(同じフレーズを叩く)場面があるかと思えば、
ドラム・ランゲージをしゃべったあとで、それに返答するような形式で、
トーキング・ドラムが叩くなどの掛け合いが聞かれるんですね。

これって、いわば、
ドラム・ランゲージ・スピーカーというべき役割の人なんじゃないのかな。
アデやオベイの時代でも、コーラス隊とトーキング・ドラムが、
ドラム・ランゲージで掛け合うのを、インタープレイの場面で聞けましたけれど、
フェミが歌っている矢先で、ちゃちゃを入れ続けるようにしゃべりまくって、
トーキング・ドラムを煽るというのは、すごく耳新しく聞こえました。

ヨルバのドゥンドゥン・アンサンブルでは、いわゆる歌手が、
ドゥンドゥン(トーキング・ドラム)と掛け合うのに、
このドラム・ランゲージを使う伝統がありますけれど、
これを大胆に取り入れたのが、このドラム・ランゲージ・スピーカーなんじゃないかな。

それが、ヨルバのドゥンドゥン・アンサンブルといった伝統のワクからはみ出た
ジュジュ最新のサウンドのなかで発揮されると、
ラッパーのフロウのようにも聞こえて、すごく耳新しく響きますよね。
こんなところにも、フェミ・ソーラーのジュジュが伝統と現代を拮抗して、
新たな地平をみせているのを感じさせます。

Femi Solar "SPOT ON" FS7 Music/Golden Point Music no number (2021)
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