SSブログ

ハーモニカとフェンダー・ローズの饗宴 トゥーツ・シールマンス [西・中央ヨーロッパ]

Toots Thielmans Live 2.jpg   Toots Thielmans Live 3.jpg

トゥーツ・シールマンスのハーモニカを初めて聴いたのは、
ポール・サイモンの“STILL CRAZY AFTER ALL THESE YEARS”(75)の
A面最後に収められた‘Night Game’ でした。
この1曲にヤラれて、トゥーツのレコードを集め始めたんだっけなあ。
大好きなアルバムはいろいろあるんですけれど、
集めたての頃に買った76年の“LIVE 2” が、一番愛着がありますね。
いまだにCD化されてなくて、たいへん遺憾ではありますが。

オランダのポリドールから出たライブ3部作のうちの1枚で、
第1集はイマイチなんだけど、第2集から超絶技巧のベーシスト、
ニールス・ヘニング・エルステッド・ペデルセンが入って、
がぜん演奏が引き締まったんでした。
ペデルセンがエレクトリック・ベースを弾いているというのが、
なかなかレアでしたね。

で、このアルバムを気に入っている理由は、トゥーツのプレイは言うに及ばず、
ロブ・フランケンが弾くフェンダー・ローズのサウンドとハーモニカの相性が
絶品だったからです。“LIVE 2” でプレイしたポール・サイモンの
‘I Do It For Your Love’ なんて、オリジナルが霞むほどの名演でした。
そんなハーモニカとフェンダー・ローズの相性の良さは、
ブラジルのマウリシオ・エイニョルンの“ME” でも証明されてましたよね。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-04-04

Toots Thielemans meets Rob Franken  STUDIO SESSIONS.jpg

そんなトゥーツとロブ・フランケンのコンビを愛するぼくにとって、
宝物のような発掘音源が出たんですよ!
この二人のコンビで、73年から83年の間に6回にわたって行われたという
セッションを収録した3枚組です。

リイシュー・プロデューサーのフランク・ヨケムセンの解説によれば、
FUMU・セッションズと呼ばれたこのセッションは、ホテルのロビーや空港、
ショッピング・モールで流すためのファンクショナル・ミュージック(実用音楽)、
いわばBGMのレコーディングだったようです。
よく知られたスタンダード曲を、なんの準備やリハーサルもなしにワン・テイクで仕上げ、
2時間でレコーディングを終えるというセッションだったそうです。

いわゆる、ジャズ・ミュージシャンにとっての<お仕事>だったわけなんですが、
これが<やっつけ>どころか、とんでもなく充実した演奏になっているんです。
トゥーツは、このセッションを仕切った若き鍵盤奏者ロブ・フランケンに大きな影響を受け、
このセッションの録音を持ち帰り、ロブのソロだけを集めて研究するほど、
感化されたんだそうです。
そんな逸話も納得できるパフォーマンスで、ファンにはたまらない贈り物です。

82年と81年のセッションを収録したディスク1はフュージョン、
78年と74年のセッションを収録したディスク2はオーソドックスなジャズ、
73年と82年のセッションを収録したディスク3はジャズ・ロック調の曲で始まり、
クロスオーヴァーなムードがあるなど、それぞれテイストの異なるサウンドながら、
いずれもロブ・フランケンのメロウなローズが要となっていて、
もう、極楽というほかありません。

そういえば思い出したけど、
トゥーツのレコードをいろいろ買い集めてた頃に、トゥーツが初来日したんだっけなあ。
79年7月、単身で日本にやってきて、日比谷公会堂でコンサートをしましたね。
大学3年生だったぼくは、当時付き合っていた彼女を誘って一緒に観に行ったんですけど、
チケットを忘れる大ポカをやらかし、当日券料金を払って入ったんでした(恥)。

あのコンサートでは、山本剛トリオがバックを務めていました。
コンサートのあと、このメンバーでデンオンに録音し、アルバムを1枚出しましたよね。
山本剛が弾いたのがエレピではなかったからか、
ぼくはそれほどコンサートにカンゲキはしなかったですけど、
松任谷正隆が「僕が観たベストライヴ」と、自伝に書いてましたっけ。
(「僕の音楽キャリア全部話します」松任谷正隆 新潮社 2016 25ページ)

この初来日のときには、松岡直也のグループ、ウィシングともセッションをしていて、
トゥーツと松木恒秀の共同名義のアルバム“KALEIDOSCOPE” を残したんですよね。
このアルバムは、ぼくも大好きでした。

話がすいぶん脱線しちゃいましたけど、
この3枚組、ハーモニカばかりでなく、トゥーツお得意の口笛ギターが、
メロウなローズのサウンドにのせて弾かれるトラックもそこかしこにあって、
もう至福というほかありません。

[LP] Toots Thielemans "LIVE 2" Polydor 2441063 (1976)
[LP] Toots Thielemans "LIVE 3" Polydor 2441076 (1978)
Toots Thielemans meets Rob Franken "STUDIO SESSIONS 1973-1983" Nederlands Jazz Archief NJA2201
コメント(0)