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アメリカン・フォークの実験場 サリー・アン・モーガン [北アメリカ]

Sally Anne Morgan  CUPS.jpg

アパラチアの伝統音楽を拡張するマルチ奏者、サリー・アン・モーガンの第2作。
昨年11月にデジタル・リリースされて、遅れること7か月、
ようやくCDがリリースされ、手元に届きました。
プリ・オーダーしていたのも、すっかり忘れてたんですが、
なんとデジタル版より2曲多く収録されていて、わーい(*´▽`*)
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-11-23

サリーのデビュー作で披露された、伝統音楽の枠をはみ出る実験的な音楽性に、
どういうバックグランドの人なんだろうと思っていたんですが、
サリーのインタヴューを読んでびっくりしました。

初めて買ったレコードが、ボブ・マーリーの『エクソダス』なのには、
微笑ましく思いましたけれど、
絶対に手放せない10枚のレコードとして挙げたアーティストに、
アリス・コルトレーン、ドン・チェリー、アーサー・ラッセル、ジョン・コルトレーン、
ローリー・シュピーゲルの名があるのには、ノケぞりましたね。
真っ先に、ディラード・チャンドラーとクライド・ダヴェンポートという
アパラチア伝統音楽の2枚がリスト・アップされていたとはいえ、
残りの8枚がジャズに現代音楽、電子音楽というセレクトは、意外すぎました。

な~るほどねえ、こういう音楽遍歴の人だと知れば、
今作のインスト集も、素直に受け止めることができます。
全曲サリーが自作したインスト曲なんですけれど
(CDのみ追加の2曲のうち1曲は伝承曲)、
伝統音楽のメロディやリズムの断片をパッチワークしたような曲で、
即興の占めるパートが大きいんですね。

即興といっても、伝統音楽の演奏家による即興演奏とは本質的に異なり、
ミニマルなアプローチや、ヴァースとコーラスといった構成からの逸脱など、
随所に現代音楽や電子音楽から吸収してきたアプローチをしています。
サリーはギター、バンジョー、ダルシマー、フィドル、グロッケンシュピール、
木琴、小物打楽器など、さまざまな楽器を多重録音して、
自由で発想力豊かなサウンドスケープを生み出しています。

フォークトロニカや音響派をホウフツさせる、
まったく新しいアプローチのアメリカン・フォーク、ユニークですねえ。

Sally Anne Morgan & sheep.jpg
* Thrill Jockey のツイートより無断転載 (あまりにいい写真なもんで)

Sally Anne Morgan "CUPS" Thrill Jockey THRILL562 (2021)
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