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台湾ジャズとネオ・ソウルの邂逅 リニオン [東アジア]

Linion  LEISURELY.jpg

台湾、すげぇ。

これも『アジア都市音楽ディスクガイド』で知ったアルバムなんですが、
シティ・ポップというより、ネオ・ソウルの極上品じゃないですか。
生演奏のレヴェルの高さといったら、ハンパない。
東アジアらしい感性を強く感じさせる作品で、
日本とも欧米とも異なる台湾独自のセンスに、すっかり魅入られちゃいましたよ。

このCDを手に入れるまでは、ちょっと手間取りました。
インディ盤のせいなのか、在庫している店が少なく、
扱っている店もことごとく売切れで、6・7軒探し回った後にようやく見つけました。
2年前のアルバムで、きっと売れたんでしょうねえ。

これだけの内容なんだから、当然という気がしますが、
CDパッケージは、6センチ角という大型サイズで、6面パネルの特殊ジャケット。
どんだけ凝るんだかという、インディならではの贅沢なアートワークです。

LINION(リニオン)は、23歳のシンガー・ソングライター。
ロス・アンジェルスへ2年間音楽留学し、
17年に帰国してから本格的に音楽活動を始めた人とのこと。
18年にデビュー作を出し、本作が2作目。

オープニングのもたったドラムスに、いきなりヤラれました。
え? これ、誰が叩いてんの? あわてて封入されていた、
歌詞カードならぬクレジット・カードをみると、
「エファ・エトロマ・ジュニア」と書かれています。
どういう人かとググったら、カナダ人ドラマーで、
現在はロス・アンジェルスを拠点に活動している人らしい。
クリス・デイヴに影響を受けたドラマーであることは、まるわかりですね。

さらに調べると、ムーンチャイルドのツアー・ドラマーを務めていたというのだから、
オドロキ。どうやらぼくが17年にコットン・クラブで観たドラマーのようです。
ネオ・ソウルのシンガー・ソングライターであるリニオンが起用したのも必然というか、
どハマリのドラマーですね。ひょっとして音楽留学時代のコネクションかな。

ドラムス以外は、全員台湾のミュージシャンのようで、リニオンはベースを弾いています。
そういえばリニオンのバイオに、音楽留学でベース科を専攻していたとありましたね。
よくグルーヴするベースで、ドラムスに絡むウネるようなラインで絶妙なベース・ソロを
繰り出す「JOMO」や、たゆたうようなドリーミーな曲のなかで、
ゆったりとしたベース・ソロをさらりと聞かせた
「想不起你的名字」も聴きものになっています。

雷擎(レイチン)がアレンジして、ドラムスも叩いた「Dude」は、リニオンとの共作。
この曲は、林庭鈺(ティム・リン)のギター・ソロが聴きものです。
「Cocoon」の印象的なピアノは、許郁瑛(ユーイン・シュー)。
やっぱ、ずば抜けてますね、この人は。聴くとピンとくるもんねえ。

曲ごとにアレンジャーを変え、キャッチーなソングライティングを
カラフルに演出していて、まったくスキのないサウンドを構築しています。
このサウンド・クオリティは、ほんと、スゴイ。
台湾ジャズとネオ・ソウルが邂逅した作品、感服しました。

LINION 「LEISURELY」 嘿黑豹工作室 no number (2020)
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