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毒を昇華するチャルガ アジス [東ヨーロッパ]

Azis  GADNA PORODA.JPG

怖いものみたさで、とうとう手を出しちゃいました。
ブルアリア、チャルガの帝王アジスの最新作。
スキャンダラスなハードゲイの性表現に、さぞかし音楽の方も
こけおどしの重低音や爆音を放つエレクトロで、過剰な音作りになっているのかと思いきや、
意外にもスキマのあるサウンドで、すんなりと聴けてしまいました。

チャルガやポップ・フォークと呼ばれるブルガルアのダンス・ポップスは、
安直な作りのプロダクションが多く、積極的に聴く気が起こらないんですけど、
このアジスやガルナは、トルコ、セルビアなど周辺国のダンス・ポップスや
レゲトンなどの影響より、ロマ音楽をベースとした音楽性をしっかりと発揮していて、
チャルガのアイデンティティをはっきりと聴き取ることができます。

クラリネットの妖しい響きやダルブッカのめくるめくビートは、
異形としてのアジスの個性を強調するばかりでなく、
チャルガのまがまがしさを昇華しているようにも思えますね。
毒をもって毒を制すの典型でしょうか。

アジスの「性」のタブー破りは、かつてマドンナが性表現の自由を拡張しようと闘ったのと、
同じものと映ります。マドンナがその武器に使ったクラブ・ミュージックには、
ぼくは興味を覚えませんでしたけど、アジスのチャルガには心惹かれます。
というのは、アジスのチャルガからは、かつてのダンドゥットが持っていた
スラムの若者たちのパワーや熱のようなものが伝わってくるからなんですね。

長きにわたり社会主義国家だったブルガリアの社会で、
ゲイ・カルチャーやロマというマイノリティの存在を強調することは、旧来の価値観と
自由を性急に求める民主化後の新しい価値観との衝突を際立たせるものでしょう。
アジスのハードゲイの装いは、社会の異端を誇示することで少数派を代弁するとともに、
自由を希求する若者たちの心に火をつけたんじゃないでしょうか。

アジスのチャルガが、かつてロマ・イラマがスラムの貧しい若者に圧倒的な支持を広げた
ダンドゥットと妙に似た感触があるのは、そのせいなんじゃないかと
あてずっぽうに考えているんですが、じっさいのところは、どうなんでしょう?

Azis "GADNA PORODA" Ara Audio Video ARACD496 (2011)
コメント(2) 

コメント 2

馨

確かに、ポップ・フォークのアルバムはハズレが多いですよね。同じようなセクシー・アイドルばかりだし。(笑)
昔のポップ・フォークはギリシャ風の楽曲が多かったですが、ロマ音楽をベースとした音楽性の歌手は少ないと思います。それがチャルガとポップ・フォークの違いなんでしょうね。

アジスは、シングル曲「Hop」のビデオがカッコイイです。その曲を収録した新作アルバムが出るのが待ち遠しいです。
あと、アジス&マリーナの「Iskam, Iskam」のビデオもハマりました。(笑)
by (2013-08-12 22:42) 

bunboni

う~ん、アジスのPVは(汗)。音だけでいいです(笑)。
by bunboni (2013-08-13 06:34) 

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