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グアドループのファム・ファタール タニヤ・サン=ヴァル [カリブ海]

Tanya St-Val  VOYAGE.jpg

ズークが爆発した80年代半ば。
ズークのアイドル・シンガーとしてジョセリーヌ・ベロアールと人気を二分した
タニヤ・サン=ヴァルが、いまだ衰えぬ魅力を発揮しているのは、
デビュー作から30年来追っかけてるファンにとって、嬉しい限りです。

いくらアイドル・シンガーといえど、さすがに50を超えれば、
若い時の魅力と同じままというわけにはいかなくなるものなのに、
この人のチャーミングさは不変。
押しの強い肉食系・妖艶キャラが持ち味のタニヤだからこそ、
若さ勝負のカワイコちゃんタイプでは突破できない、年齢の壁を乗り越えられるのかも。
耳元で囁くように歌う甘やかさと、男をかしづかせるセクシーさは、
ファム・ファタールのような魔性を感じさせますよね。

さて、そのタニヤの新作、08年の“SOLEIL” 以来8年ぶりとなるアルバムです。
UVカット化粧品のポスターみたいなジャケットが、
グアドループからの風を感じさせ、爽やかじゃないですか。
なんと2枚組という力の入った作品で、それぞれ“SOLEIL” “LUNA” と題しています。

2枚の制作陣はそれぞれに違い、念入りに仕上げたんですね。
どちらも収録時間は30分前後で、1枚に収めることもできたはずですが、
あえて2枚組にしたのは、サウンド・カラーの違いを強調したかったんでしょう。

『お日さま』編は、原点回帰といえるシンセを重ねたサウンドで、
割り切った大振りのビートを強調したストレートなズーク。
一方の『お月さま』編は、ジャジーなズークを聞かせます。
スキマのあるサウンドで、ブーラ(太鼓)などのパーカッションを効果的に使い、
細分化されたリズムを強調していて、ぼくの好みは『お月さま』編の方。

寒い冬を忘れさせてくれる、嬉しいズーク快作。
ここんところズークを聴いてなかったなあという方にも、オススメです。

Tanya St-Val "VOYAGE" Netty Prod & Mizikarayib NP12-2016 (2016)
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