黒人音楽を歌った白人女性歌手 エラ・メイ・モース [北アメリカ]
白人女性ヴォーカル・マニアにはおなじみのスペインLP Timeから、
エラ・メイ・モースの57年キャピトル盤が復刻されました。
LP Timeは「幻の名盤」クラスのアルバムを復刻する専門レーベルで、
LP現物にお目にかかったことすらないような逸品がカタログに並んでいるのですが、
珍しいことにこのLPは持っていたのでした、えへん。
エラ・メイ・モースはジャズ・マニア好みの金髪美人歌手といったタイプとはまったく毛色の違う、
ブギウギ、ジャンプ・ブルース、R&Bと、黒人臭をぷんぷん撒き散らすシンガーです。
T・ボーン・ウォーカーも在籍していたフレディ・スラック楽団を伴奏に歌った
“Cow Cow Boogie”(42年)は、白人チャートではなく黒人チャートでヒットし、
リスナーはエラ・メイを黒人と勘違いしていたといいます。
当時キャピトルはまだ新興レコード会社にすぎず、この曲が会社初の大ヒットになったおかげで、
その後の経営を安定させることができた、なんて逸話が残ってるくらいですからね。
エラ・メイはその後もジャンプ・ブルースやR&Bなど黒人好みのナンバーを歌い、
“House Of Blue Lights”(46年)、“Blacksmith Blues”(52年)の大ヒットを残します。
これらの録音は、今でこそベア・ファミリーの5CDボックスを筆頭に多くの編集盤CDで聴けますが、
当時は黒人マーケット向け歌手としてシングルしか出されず、
LPはたった1枚、10インチを出しただけでした。
今回LP TimeがCD化した57年のキャピトル盤は、
彼女が引退直前にゆいいつ残した12インチLPです。
それまでのレパートリーとはガラリとかえた白人客層向けのアルバムで、
ポピュラー・スタンダード・ナンバーばかりが並んでいます。
彼女本来の持ち味とは異なるレパートリーとはいえ、
凡百の女優あがりの歌手なんぞにゃマネのできないリズムのノリやスウィンギーな歌唱は、
やはりエラ・メイと感心させられます。
彼女がもし引退せずにそのままR&Bを歌い続けたら、
ロックンロール・レディとなってブレイクしたかもと夢想するのですが、
当時すでに7人の子供もいたそうで、年齢的にはちょっとキビしかったのかもしれません。
[LP:写真] Ella Mae Morse "THE MORSE CODE" Capitol T898 (1957)
[CD] Ella Mae Morse "THE MORSE CODE" LP Time LPT1073
2009-08-29 00:26
コメント(2)
わたしもこの人はわりと好きです。
この時代にしては珍しいタイプの白人女性歌手だと思います。
このアルバムのタイトル、モールス信号にひっかけてるんですね。
by t-42 (2009-08-30 19:22)
粋なタイトルですよね。
エラ・メエ・モーズはルイ・ジョーダンの“Blue Light Boogie”にも影響を与えたんだそうです。
by bunboni (2009-08-30 19:36)