ジャズ・デ・ジュンの66年

　　　

ハイチの名門楽団といえば、63年結成のトロピカーナや
48年結成のセプテントリオナルも有名ですが、
なんといってもまっさきに挙げるべきは、
もっとも歴史の古い43年結成のジャズ・デ・ジュン（ジャズ・デ・ジューヌ）でしょう。
昨年８月、ポルトープランスで結成65周年記念コンサートを開いたという
ニュースも伝えられ、いまも活動が継続しているのには、正直驚きました。
こんな優雅なサウンドが、世界最貧国のハイチで
どのようなお客さんを前に奏でられているのか、ちょっと想像がつきませんが…。

はじめてジャズ・デ・ジュンを聴いたのは、
『33周年記念』のタイトルで出た76年のミニ盤でした。
当時はタブー・コンボやスカシャなどのコンパに夢中で、
モダン・コンパの父と呼ばれるヌムール・ジャン・バチストさえ、
まだ知らなかったんじゃなかったかな。
そんなハイチ音楽聴き始めの頃だったので、ビッグバンド・サウンドのメラングは、
正直ピンときませんでした。

その後しばらくしてから“FLEUR DE MAI”(69年）を聴いて、
コンパ以前のメラングの魅力に開眼し、
さらに“VACANCES”（62年）の民俗色豊かなリズムにトリコとなり、
あらためてミニ盤の“33E. ANNIVERSAIRE”を聴き直して、
その良さがわかったものでした。

メラングのアルバムには、
ペトロ、イボ、ナゴといったヨルバ起源と思われるリズムの形式名が、
曲目の最後に書かれているのをよく見かけます。
そのひとつひとつのリズムの違いは、ぼくにはまったくわかりませんが、
コンパはこれらのアフロ色豊かなリズムを捨て、
分かりやすく整理したところが大流行した秘密だったのでしょう。
もっとも、のちにそれがアダとなってワン・パターン化し、
衰退してしまう原因ともなったわけですが。

最初に掲げた10インチ盤は、Emmanuel Mirtil氏やKonpa.infoなどの
ハイチ音楽ディスコグラフィーには未掲載のもので、
ジャズ・デ・ジュンの初ＬＰじゃないかとぼくはにらんでいます。
それ以前では、ポルトープランス市200周年記念として製作された
３枚組SPアルバムがあります。
制作したのは、マイアミのヴィーナス・レコードで、
女性歌手ルマネ・カシミールほかの歌手の伴奏をジャズ・デ・ジュンが務めていて、
彼らの最初期の録音といえます。

さすがに10インチやSPアルバムは未ＣＤ化ですが、
ジャズ・デ・ジュンのカタログはかなりＣＤ化されていて、
ぼくが持っているもので８枚あります。

楽団名を「若者向けの音楽」と名づけたジャズ・デ・ジュンは、
43年の結成から今日までの66年間、
ハイチの歴史の移ろいをどのように見てきたんでしょう。

[10インチ] Jazz Des Jeunes "HAÏTIAN MERINGUES" Anson 823 (1958)
[SPアルバム] Jules Heraux, Jean Brierre, Altacidas Murat, Lumane Casimir, Othello Bayard, Jazz Des Jeunes
"VOLONTE" Venus 202/203/204 (1949)
[CD] Jazz Des Jeunes "SATURDAY NIGHT IN PORT-AU PRINCE" Marc MARC203 (1961)
[CD] Super Jazz Des Jeunes "VACANSES" Ibo CD113 (1962)
[CD] Super Jazz Des Jeunes "HAITI - 20EME ANNIVERSAIRE" Ibo CD118 (1963)
[CD] Super Jazz Des Jeunes "MARIE SOUS PIANO" Ibo CD126 (1964)
[CD] Le Jazz Des Jeunes "25E ANNIVERSAIRE" Geronimo GR0088 (1968)
[CD] Super Jazz Des Jeunes "FLEUR DE MAI" Marc MARC204 (1969)
[CD] Jazz Des Jeunes "33E. ANNIVERSAIRE" Mini MRSD1055 (1976)
[CD] Super Jazz Des Jeunes "LE NOUVEAU STYLE" Geronimo GR00230 (1982)