聖夜のゴシック・ハープ テレーズ・シュローダー=シェーカー [北アメリカ]
全編ハープの弾き語り。控えめにチェロが伴奏に付くだけというシンプルなアルバムです。
静かに聖夜を過ごすには、これほどふさわしいアルバムはないかもしれません。
正直ぼくの音楽的嗜好からは、かなり縁遠いタイプのもの。
古楽というジャンルには関心がないのですが、
偶然出会ったこのアルバムは、長年愛聴してきました。
しんしんと雪の降り積もる北国を思わせる、ハープの調べ。
その神秘的なハープの響きからは、ほの暗いモノトーンの情景が広がり、
ところどころ顔を出すエキゾティックな旋律が、
分厚い雲の切れ目から差し込む、一縷の光をイメージさせます。
アルバムの主役テレーズ・シュローダー=シェーカーの透明無垢なソプラノ・ヴォイスは、
祈りを捧げるかのように、聴き手の心を世俗から解き放ってくれます。
このアルバムを聴くと思い浮かぶ情景が、その昔、狭いアパート暮らしをしていた頃のこと。
子供がまだ小さく、親子川の字で寝ていた居間兼寝部屋の六畳間。
ぼくの脇でアイロンをかけていた妻の手元から、ふわりと立ち上る匂いを思い出します。
その匂いは、ささやかながら平和な日々の暮らしの象徴でした。
アイロンがけの匂いは、アパートで妻とこのCDを聴いていた記憶と、
分かちがたく結びついています。
Therese Schroeder-Sheker "ROSA MYSTICA" Celestial Harmonies 13034-2 (1990)
2009-12-23 00:24
コメント(0)
コメント 0