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ジンバブウェ版「ブエナ・ビスタ」 クール・クルーナーズ [南部アフリカ]

The Cool Crooners.jpg

こんなCDが出ていたなんて、ぜんぜん知りませんでした。
ジンバブウェのコーラス・グループ、クール・クルーナーズの01年作。
50年代にブラワヨで活躍していたヴェテラン歌手たちが、
90年代になって集まり、新たに結成したグループで、
このフランス盤がデビュー作だそうです。

懐かしい50年代のタウンシップ・ジャズを再現した内容で、
いわば、ジンバブウェ版「ブエナ・ビスタ」。
スウィング・ジャズのリズム感を伴ったマラービ調の曲と、
よりビート感覚を強めたンバクァンガ調の曲がほどよく並んでいて、
彼らが活躍した50~60年代の、マラービからンバクァンガへと移り行く時代の変遷を
そのまま照射した内容となっています。

アルバム・タイトル曲の“Blue Sky” には、クール・クルーナーズを結成したエイブル・シトレの、
10年間に及ぶ刑務所生活の苦難が込められているとのこと。
エイブルは、ジンバブウェ独立闘争時に政治活動へ参加して逮捕され、
当初は死刑宣告を受けたんだそうです。
その後18年の刑に減刑されるものの、刑務所で10年間を過ごし、
ジンバブウェ独立の80年になってようやく釈放されたというのだから、
その人生がどんなに過酷なものだったかは、想像に難くありません。
刑務所の高い塀の上に広がる青空は、
独立のために戦った自由の象徴であったと、エイブルは語っています。

独立闘争が激化する以前のブラワヨでは、
人気を二分したコーラス・グループが存在していました。
それが、エイブルがメンバーだったゴールデン・リズム・クルーナーズとクール・フォーです。
ヴォーカル・ワークならゴールデン・リズム・クルーナーズ、
ダンス・パフォーマンスならクール・フォーとの評判も高く、
両者は50~60年代を通じて、よきライヴァル同士でした。
この二つのグループの元メンバーたち3人が再会して結成されたのがクール・クルーナーズで、
バリトンを担当する最年少(といっても50歳)メンバーを加えて活動をしています。
このデビュー作以降、メンバー2人を亡くしましたが、
新メンバーを加え、アルバムも3作目までリリースされているようです。

思えば、往時のブラワヨのタウンシップ・ジャズは、ほとんどCD化されていませんね。
アウグスト・ムサルルワを中心とした録音を編集した
“BULAWAYO JAZZ, SOUTHERN RHODESIA 1950 ’51 '52” があるくらいで、
ヴォーカルものはまったくの未復刻です。
ゴールデン・リズム・クルーナーズ、クール・フォーのほか、
デ・ブラック・イヴニング・フォリーズ、パイン・トップス・バンドなど、
ぼくも名前だけしか知らないグループがいっぱいあります。
50~60年代のブラワヨを彩った録音を、ぜひ聴いてみたいものですね。

The Cool Crooners "BLUE SKY" Atelier Noaille EPC5023059 (2001)
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