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夫をスルタンにする方法 ムスタファ・カンドゥラル [西アジア]

Ozel Turkbas.JPG

う~ん、ゾクゾクしちゃうタイトルですね。
69年にアメリカで出たベリー・ダンスの教則レコードなんですけど、
アメリカで15万枚、トルコでは100万以上のセールスをあげたっていうんだから、スゴイ。
ハウ・トゥものとは思えぬ大セールスになったのも、その扇情的なタイトルとジャケのせいで、
いまでも中古レコード屋でよく目にするし、一時期はモンド盤扱いされてましたね。
04年にトラディショナル・クロスローズがCD化し、昨年日本盤でもリリースされました。

トルコでミリオン・セラーとなったのは、
それまでトルコ本国ではベリーダンス・ミュージックのレコードがなかったからという、
灯台もと暗しみたいな話も興味深いところです。
ナイトクラブのいかがわしい音楽をレコードにするなんて発想は、
当時のトルコ人にはまだなかったんですね。
アルバム名義はカリスマ・ベリー・ダンサーである、オゼル・テュルクバシュとなっていますけど、
演奏はトルコのトップ・クラスのミュージシャンが勢ぞろいした一大セッション。
トルコ古典音楽や西洋クラシック音楽も身につけた精鋭ぞろいによるハイ・レベルな演奏が、
なおさら新鮮な衝撃を与えたんでしょう。

メンバーの中でも特に有名なのが、クラリネット奏者のムスタファ・カンドゥラルです。
ゼキ・ミュレンの楽団で名を挙げ、60年代からはトルコ国内ばかりでなく世界的に活躍しました。
30年、トルコ第3の都市イズミールに生まれ、
54年にイスタンブールでルイ・アームストロングとセッションをし、
60年代のはじめにはベイルートの有名ナイトクラブにレギュラー出演、
さらにインド、オーストラリア、アメリカへとツアーをして、その名が一躍有名になった人です。

Coskun  CD051.jpg   Coskun 2nd.JPG

カンドゥラルのクラリネットが堪能できる代表作といえば、トルコCoşkun盤があります。
カンドゥラルの脂が乗り切った時期の、60~70年代の演奏が楽しめます。
最近またジャケを変えて再発されていて、
新しいリイシュー作が出たのかと勘違いして買ってしまいましたけど、
現在でも廃盤とならず、入手容易な定番となっているのはイイことですね。

Mustafa Kandirali.JPG

このほか、生誕75歳を記念して制作された、
ハードカヴァーの豪華CDブックでも、充実した演奏が聞けます。
こちらは70年代録音を中心に、ジプシーの歌、ベリー・ダンスの曲、
即興ソロ演奏(タクシーム)を織り交ぜて計15曲を収録。
抑制の効いたタクシームが聴きもので、じっくりと耳を傾けるほどに味わいが深まります。
トルコ語・英語で書かれた100ページに及ぶブックレットも、読みごたえがあります。

カンドゥラルはどんなに激しくブロウしてみても、
どこか覚醒しているような感が強く、常に抑制が利いています。
だから、ベリー・ダンス音楽をやっても、プレイが扇情的にならないんですよね。
たとえばイスタンブールのロマたちが演奏するベリー・ダンス音楽と表情がまったく違うのは、
トラディショナル・クロスローズ盤の“SULUKULE : ROM MUSIC OF ISTANBUL” と
聴き比べてみれば、一聴瞭然でしょう。

ベリー・ダンスものは当たると味をしめたトルコのレコード会社は、
その後のカンドゥラルのジャケに、あからさまなヌードを配したり、
ずいぶんあざといことをしてましたけど、
カンドゥラルのプレイはそんな卑俗さとは無縁で、常にキリッとクールなのでした。

Özel Türkbaş "HOW TO YOUR HUSBAND A SULTAN : BELLY DANCE WITH ÖZEL TÜRBAŞ" Traditional Crossroads CD4323
Mustafa Kandirali "MUSTAFA KANDIRALI" Coşkun CD051
Mustafa Kandirali "MUSTAFA KANDIRALI" Coşkun no number
Mustafa Kandirali "MUSTAFA KANDIRALI" Uzelli 1302-2
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