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知られざるジャズソングの秘宝 童謡ジャズ [日本]

オ人形ダイナ.JPG

童謡ジャズ!!! こんなものが戦前にあったなんて……。
世の中には、まだまだ知られざる秘宝が眠っているもんですねぇ。
これだから音楽ファンはやめられません。

♪おてて~ つないで~ 野道をゆけば~♪
9歳の少女歌手が見事なフェイクとタップを交えて歌う「靴が鳴る」など、
ジャズソングにアレンジされた童謡全21曲を収録。
「狼なんか怖くない」「村の鍛冶屋」「村祭」「お祖父さんの時計」ほか、
耳馴染みの童謡が次から次へと飛び出し、
しかもその編曲がいずれも完成度が高いんだから、舌を巻きます。

ジャズソングが流行した昭和のはじめ、東京や大阪の劇場や映画館では
ジャズやダンスのショウが上演され、子供が歌とタップダンスを披露するのが人気を呼び、
ベイビー・タップ・ダンサーと称する子供の芸人が現れたんだそうです。
わずか5歳から十代半ばくらいまでの少女たちが、英語を含めたジャズソングを歌い、
タップを踊り、アクロバット・ダンスを見せる者もいたというのだから、驚かされます。

戦後、童謡ジャズがなくなってしまったのは、
彼女たちの多くが二世子女だったりハーフだったためで、
終戦後は彼女たちのほとんどが引退、もしくは消えてしまったとのこと。
エンタテイナー的センスのあるジャズ・シンガーとして戦後活躍した
日本人のミミー・宮島だけが、ゆいいつの例外だったようです。

本作に収録された少女歌手たちは、
童謡歌手らしい折り目正しさを感じさせる平井英子から、愛らしいチェリー・ミヤノ、
大人びた歌詞をちょっと鼻にかかったチャーミングな声で歌うヘレン隅田と、
それぞれくっきりとした個性を示していますが、
とりわけニッポン・ベティ・ブープことアリス浜田には悶絶。
まるでローズ・マーフィーなベビー・ヴォイスに、ノヴェルティな味もたっぷりに、
和製ベティ・ブープを演じるのだからたまりません。

さらに、当時のジャズ・バンドの傑出した編曲と演奏にも耳を奪われます。
クラリネット、テナー・サックス、ピアノが見事なソロ・リレーを聞かせる、
テイチクジャズオーケストラの「街からの手紙」。
カントリー・スタイルよろしくフィドルのイントロで始まるコロムビア・ジャズ・バンドの「カウ・ボーイ」。
スライド・ギター(ドブロ?)やシロフォンのソロも飛び出す、
アーネスト・カアイ・ジャズバンドの「村の鍛冶屋」。
聴きどころを挙げていけば、キリがないほどです。

上の見開き写真をご覧いただくとわかるとおり、
見事なデザインを施した装丁のCDブックとなっていて、
なかには42ページに及ぶブックレットが付いています。
日本のジャズソング評論なら、この人をおいてほかはない、
瀬川昌久さんの懇切丁寧な解説も読み応え十分なら、
詳細なクレジットに、数多くの写真資料も満載で、もう大満足というほかありません。

今年の和モノ復刻では、ナンジャラホワーズの『笑ふリズム』という強力盤が出たばかりですが、
それをも上回る本作は、バートン・クレイン以来の衝撃作といえそうえす。

マーガレット・ユキ,チェリー・ミヤノ,平井英子,ヘレン隅田,ニッポン・ベティ・ブープ,リラ・ハマダ,ニナ・ハマダ,ミミー・宮島
「オ人形ダイナ ~戦前童謡・ジャズとタップ~」 ブリッジ/コロムビア BRIGE184
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