それでも春は来る トラインチェ・オースターハイス [西・中央ヨーロッパ]
オープニング・ナンバーの“Everything Has Changed” を聴いていたら、
涙があふれて止まらなくなりました。
あの大震災の日以来、心が折れる毎日に、
こんなに力を与えてくれるメロディーに出会えたのは幸運です。
情報が錯綜し混乱の続くなかで、次々と降りかかる新たな事態。
後手に回るふがいなさを噛みしめながら、
誰もがもくもくと、今やらなければならない目の前の仕事に集中する。
余計なことは考えない。言ってもしかたのないことは、口にしない。
歯を食いしばって、爆発しそうな感情を胸の奥底に閉じ込める。
こんなときでも、いや、こんなときだからこそ、人と音楽に救われるのでしょうか。
オランダのポップ・シンガー、トラインチェ・オースターハイスの新作の1曲目、
シャワーのように降り注ぐ鮮やかなメロディーに、せき止めていた感情があふれ出ました。
挫けかかる心を引き上げ、緊張で強張った顔の筋肉がほぐれると、
しばらく忘れていた微笑みが、しぜんと浮かんだのです。
メロディーをいっさいいじらず、
真正面から歌い切るトラインチェの歌いぶりに、ハッとさせられました。
フェイクをいっさい使わない、そのストレートな歌唱に心が揺さぶられます。
クレイトン=ハミルトン・ジャズ・オーケストラをバックに、
なんの力みもなく、堂々と歌うトラインチェ。
自分の持てる力をフルに発揮して、あとには何も残さない潔さに胸がスカッとします。
見上げれば、桜の花がもういくつも芽吹いていました。
春はもうやって来ていたんですね。
Trijntje Oosterhuis "SUNDAYS IN NEW YORK" Blue Note 50999 07 14592 6 (2011)
2011-04-07 00:00
コメント(5)
このシンガーは初めて聞きましたが、ストレートに滲み出てくるブラックフィーリングが清々しいですね。アレサ フランクリンの Baby Baby Baby をカバーしてほしいなと、ふと思いました。
by ナックル (2011-04-07 03:06)
ぼくもこのアルバムでトラインチェをはじめて聴いたんですけど、アレサ フランクリンの Baby Baby Baby 、面白い仕上がりになりそうですね。
by bunboni (2011-04-07 06:37)
Michael Jackson のカヴァーも素晴らしいですよ。
by ペイ爺 (2011-04-08 13:54)
マイコーもカヴァーしてるんですか。知りませんでした。
by bunboni (2011-04-08 23:24)
そうなんです。“Never Can Say Goodbye ”。
近年、米国国立国会図書館から発掘された、Monk と Coltrane のCarnegie Hall の Live CD でも 表紙を描いていた、Felix Sockwell
の、例の「一筆書き」ポートレイト・イラストも、似ててイイ味出してます。
by ペイ爺 (2011-04-09 11:28)