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エジ・リンコルンのムジジスク録音 [ブラジル]

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またまたジスコベルタスがやってくれました。

ボサ・ノーヴァの時代に、スウィング感溢れるダンス・サウンドで若者たちを夢中にさせた、
バランソのピアニスト/オルガン奏者
エジ・リンコルンのムジジスク録音を完全復刻したボックスです。
60年から66年までのムジジスク盤6タイトルを、
オリジナル・フォーマットのまま復刻してくれたっていうのが、嬉しいですねえ。
当時のアルバムは30分前後の収録時間しかないので、
2イン1CDでリイシューされがちですけれど、
そうしなかったところに、リイシュー・レーベルの良心というか、復刻愛を感じちゃいますよ。
マスター・テープからリマスターした音質も極上なら、詳しいデータを完備した
いつものジスコベルタスのしっかりした仕事ぶりにも、頭が下がるばかりです。

ぼくはエジ・リンコルンのムジジスク盤を、66年の“ED LINCOLN” しか聞いたことがなく、
いきなりボックスに手を出すのは少しためらいもしましたが、
あらためて6作を聴いてみて、この人の存在感の大きさを再認識させられました。
エジの代表作として知られる66年の“ED LINCOLN” だけを聴いていた時は、
お手軽なポップ・サウンドをやっていた人ぐらいの認識だったのですけど、
じっくり聴いてみると、ブラジルのポップス王道ともいえる内容の濃さにウナらされました。

60年のムジジスク第1作のオープニングからして、
ブラジルのスタンダード・ポップス、アリ・バローゾの「ブラジルの水彩画」ですからね。
続いてジョー・ロコの「ロコモーション」に、コール・ポーターの「カン・カン」、
「センチメンタル・ジャーニー」といった北米のダンス・チューンに、
シャルル・アズナヴールの曲などの外国曲を織り交ぜながら、
ブラジルの渋谷系ともいえるオシャレなサウンドを、
ラウンジーなオルガンでカラフルに楽しませてくれます。
「センチメンタル・ジャーニー」のイントロで、機関車の音をオルガンで模してみせるなど、
あちこちに散りばめられたウイットのあるポップ・センスが、実によく利いたアルバムです。

エジは、50年代に若きバーデン・パウエルを従えて
レコーディング・キャリアを積んだ職人的な人だっただけに、
コーラスやヴォーカルの使い方も巧みなら、さまざまなリズムの扱いも鮮やか。
セルジオ・メンデスとも共通するポップ・センスの持ち主だったんですね。

こうして聴いてみると、外国曲のレパートリーを多く取り入れた
60年の“ÓRGÃO ESPETACULAR” がもっともポップス度指数が高く、
サンバのリズムを強調したバランソは、61年から64年までの4作で発揮されています。
なかでも64年の“A VOLTA” がもっともバランソ感覚が強く、
サンバランソといった形容がぴったりのアルバム。
サンバのリズムと合体させたクリフォード・ブラウンの“The Blues Work”など、
ゴキゲンにスウィングしてます。
ビリンバウとアタバーキをフィーチャーしたアフロ調の“Na Onda Do Berimbau” や、
ほかにもバイーア風味の曲をレパートリーに取り入れているところが注目されます。
自作のチャチャチャなどでラウンジー気分の盛り上がる62年の“ÁLBUM №2” では、
ボサ・ノーヴァの名曲“Estamos Ai” にフィーチャーされる流麗なハーモニカ・ソロが聴きどころ。
クレジットはないですけど、この曲の作者の
マウリシオ・エイニョルンが吹いていることは間違いないでしょう。

サンバを夢中になって聴いていた70年代当時にたくさんあったサンバ・グループ、
たとえばオス・オリジナイス・ド・サンバなどのアルバムには、
エレキ・ギターやエレピが加わった、グルーヴィーでポップなサンバがよく入っていたものでした。
エスコーラ系のサンバとは異なる、こういう庶民的で親しみのあるサンバが何なのか、
当時はよくわからずに聴いていたものですけど、これがバランソだったのですね。

ジスコベルタスにはさらなるバランソの名作復刻として、同じムジジスク原盤を使って、
オルランジーヴォとジョアン・ロベルト・ケリーのリイシューを期待したいものです。

Ed Lincoln "ÓRGÃO ESPETACULAR" Musidisc/Discobertas DB070 (1960)
Ed Lincoln "SEU PIANO E ÓRGÃO ESPETACULAR" Musidisc/Discobertas DB071 (1961)
Ed Lincoln "ÁLBUM №2" Musidisc/Discobertas DB072 (1962)
Ed Lincoln "SEU PIANO E ÓRGÃO ESPETACULAR" Musidisc/Discobertas DB073 (1963)
Ed Lincoln "A VOLTA" Musidisc/Discobertas DB074 (1964)
Ed Lincoln "ED LINCOLN" Musidisc/Discobertas DB075 (1966)
コメント(3) 

コメント 3

土木作業員

うん!すごーーく良くわかります。ブラジルは、ポップの極北ですよ。オルランジーヴォも全ぇーん部聴きたい!
Tudo joia!
by 土木作業員 (2011-06-10 22:39) 

bunboni

バランソって、シロ・モンテイロのテレコ・テコにも共通するセンスがあるなあ、なんてふうにも思えてきます。

次はオルランジーヴォのボックス、行ってもらいましょう!
by bunboni (2011-06-10 22:58) 

土木作業員

バランソって、シロ・モンテイロのテレコテコに通づる…あぁ!正にほんとはそう言いたかったんです!言いたかったんですが、酔ってたんでひねりました。すみません。
by 土木作業員 (2011-06-10 23:38) 

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