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カイルオンの伝統を継ぐ姉妹 フーン・ラン&フーン・タン [東南アジア]

Huong Lan.JPG   Huong Thanh.JPG

フーン・ランは、名作“DRAGONFLY” “FRAGILE BEAUTY” で
一躍有名になったフーン・タンのお姉さん。
大衆歌劇カイルオンの曲ばかりでなく、民謡系ポップスも歌う大ヴェテランです。
歌の上手さでいえば、妹をはるかに凌ぐ姉ですけれども、
アメリカ西海岸の越僑レーベルのプロダクションゆえ、打ち込みのドラムスが耳ざわりだったりと、
妹のアルバムのハイブリッドなサウンド・クオリティには到底及びませんでした。

そのため、フーン・ランのアルバムというと、できるだけ歌に集中し、
お粗末なバックを我慢して聴き続けてきたものですが、
07年の最新作“HÁT TỪ CỘI NGUỒN” は、バックを含め満足のいく仕上がりとなっています。
打ち込みが控え目となり、1弦琴のダン・バウや筝のダン・チャンなど、
ヴェトナムらしい弦の響きをちりばめたサウンドが、フーン・ランの練れたコブシ回しを引き立て、
これならニュ・クィン、アイ・ヴァン、カム・リーなど近年のヴェトナム歌謡ファンもオッケーでしょう。

フーン・ランとフーン・タンの父フー・フォックは、カイルオンの大物俳優・歌手で、
二人は幼い頃から、演芸と隣り合わせの生活の中で育ちました。
特にフーン・ランは、早くから才能が見込まれ、
父の指導のもと、わずか5歳でステージ・デビューしています。
一方、フーン・タンは姉に憧れて歌手をめざし、中部ヴェトナムで歌の修行を積んだあと、
16歳で劇団入りしたそうです。

Huong Lan & Houng Thanh.JPG

フーン・ランの湿り気を帯びた艶のある歌と、
フーン・タンの舌の上でスッと消える、
砂糖菓子の軽やかな甘さを思わせる歌は、姉妹ながら実に対照的。
そんなくっきりと異なる二人の個性を味わうには、
フーン・タンが08年にリリースした、カイルオン曲集がうってつけといえます。
このオコラ盤には、二人が共演した4曲が収録されていて、
ライナーに載っている写真(左:フーン・ラン、右:フーン・タン)を眺めながら、
ウェットなフーン・ランと、スウィートなフーン・タンという持ち味の違いを楽しむのも、また妙味です。

Hương Lan "HÁT TỪ CỘI NGUỒN" MFACES 8935082500105 (2007)
Huong Thanh "MUSIQUE DU THÉÂTRE CAI LUONG" Ocora C560222 (2008)
コメント(4) 

コメント 4

ケンジキエン

Huong Thanh(フゥォン・タィンと発音すべきでしょうか?日本人には難しい音です。)とHuong Lan、普通のベトナム人の間ではHuong Lanの方が圧倒的に有名ですね。ほとんど知らない人はいないくらいですから。僕等のような外部のリスナーにとってはHuong Thanhのハイブリッドな音の方が面白いのですが、現地のベトナム人には、この素っ頓狂なバックは何?なんて顔をされてしまうのですね。外から聴く音と中から聴く音、真面目に考えると(考えなくてもいいのかもしれませんが)、難しい問題です。
by ケンジキエン (2011-07-06 20:15) 

bunboni

「フォン・タイン」は北ヴェトナムの発音じゃないでしょうか。
二人は南出身なので、ぼくは「フーン・タン」「フーン・ラン」と書いています。

地元のカイ・ルオン好きのおじさん・おばさんにフーン・タンのACT盤を聞かせたら、
奇妙に聞こえてしまうのかもしれませんね。
あれは半分以上才人グエン・レの仕事ですからねえ。
ところで、グエン・レの新作“SONGS OF FREEDOM” もすごいことになってますよ。
クリーム、ジャニス・ジョプリン、ゼッペリン、ボブ・マーリーのカヴァー集なんですけど、
オリジナルになんの関心もないぼくにもびっくりの、コンテンポラリー・ジャズです。
by bunboni (2011-07-06 21:17) 

ケンジキエン

ベトナムの北と南の発音の違いが分かるとはさすがですね。(ちなみに、私は家族があちらの出なので分かって当然です。)Thanhを日本人がターンと発音すると大抵、Thangという別名に聞こえてしまうらしく、理解されません。そこで、私はあえて北部風の発音をして、誤解を避けています。Nguyen Leの新作、それは面白そうです。ちょっと調べてみましょう。それと、私、どうも現代ベトナムのポップ音楽は伝統的ベトナム演歌も含めて駄目です。やっぱり60-70年代の南ベトナム反戦歌謡、Khanh Lyの方がずっと良く聞こえます。ベトナムが不幸な時代の音楽の方が良く聞こえる、このあたりも悩ましいところです。
by ケンジキエン (2011-07-07 07:06) 

bunboni

日本では「フン・タン」と書かれていますけど、どうも納得がいかず、
あるヴェトナム人の方に訊ねたところ、上のように教わりました。
ご家族がヴェトナム出身なら、確かですね。
by bunboni (2011-07-07 21:23) 

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