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カジャオのカリプソ コンベネスェーラ [南アメリカ]

Convenezuela  GUAYANA ES... CALYPSO.JPG

ベネズエラ東部に広がるグアヤナ地方のカジャオには、
<カジャオのカリプソ>と呼ばれる、トリニダードとは異なるカリプソがあります。

19世紀後半に金鉱が発見され、カジャオの町には、トリニダード、グレナダ、
マルチニーク、グアドループから多くの労働者であふれかえりました。
やがてカーニバルが行われるようになり、カリブ海に広く伝わっていた
アフロ系の歌とダンスのカリンダを素に、<カジャオのカリプソ>が誕生します。
もちろん「カリプソ」の名がついたのは、もっとずっと後になってからのことで、
20世紀に入ってトリニダードからその名前をいただいたんでしょう。

トリニダードでは、カリンダから即興性の強い風刺の効いた歌謡音楽カイソが独立して誕生し、
そのカイソを楽しむ「テント」と呼ばれる演芸場が成立して興行化され、カリプソへと発展しました。
太鼓の使用が禁じられていたため、初期のカリプソはストリング・バンドが伴奏を務めていましたが、
カジャオのカリプソは、ブンバック(太鼓)、ラージョ(金属製ギロ)、カウベル、マラカスなど、
パーカッションをふんだんに使うアフロ色の濃さが特徴です。

即興的な歌の技量を競う、歌手の個人技が問われるトリニダッドのカリプソと違って、
カジャオのカリプソは混声合唱によるコール・アンド・レスポンスが基本。
音楽的には、マルチニークのベレ(ベル・エアー)の方が近いといえます。
トリニダードのカリプソが、細かくビートを刻むエイト・ビートを基本に、
ひっかかるようなリズム感を持っているのに対し、
カジャオのカリプソは、フォー・ビートのどっしりと安定したリズムであるところも、
フレンチ・カリブのアフロ系音楽により近いものを感じさせます。

そんなカジャオのカリプソも、金産出の減少による経済の衰退ともに忘れ去られ、
コミュニティ内の祝祭音楽としてのみ息づく音楽に後退してしまいます。
そんな片田舎の民俗芸能にすぎなかったカジャオのカリプソに光をあてたのが、
民俗音楽研究家のオスバルド・ラーレス率いるコンベネスェーラでした。
コンベネスェーラは70年代半ばにカジャオのカリプソを国内外に広め、
やがてウン・ソン・プエブロやコスタ・カリベなどのバンドも、
カジャオのカリプソをレパートリーに加えるようになりました。

50年代からコミュニティでカジャオのカリプソの伝統を護ってきた、
ケントン・サンベルナルドやルールデス・バサンタなどのヴェテラン歌手をゲストに迎えた、
コンベネスェーラの82年作“GUAYANA ES... CALYPSO” は、
正調カジャオのカリプソの決定盤といえる内容で、今もこれを凌ぐアルバムはありません。

Convenezuela "GUAYANA ES... CALYPSO" TH 1A50100529A (1982)
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