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秋空とガーリック・ソング キャスリーン・マッキネス [ブリテン諸島]

Kathleen MacInnes  CILLE BHRIDE.JPG   Kathleen MacInnes  KILBRIDE.JPG

これが2作目というスコットランドの女性歌手、キャスリーン・マッキネス。
ジュリー・ファウリスの07年作“CUILIDH” でバッキング・ヴォーカルを務めていたのを
覚えていましたが、6年前のデビュー作は聴いたことがなく、本作が初対面。
すでに40過ぎという落ち着いた声が胸に沁みる、極上のガーリック・ソング集です。

ジュリー・ファウリスのような凛としたたたずまいのガーリック・ソングもすばらしいですけれど、
かすかに枯れた声で、軽く口ずさむようなキャスリーンの歌い口もまたいいですね。
こういう声質だと、どんなきれいなメロディを歌っても、キレイゴトにならないですみます。
ハープの伴奏で歌った10曲目のアイリッシュ・ナンバーなど、
天上で天使が歌うようなあまりに美しすぎる旋律が、
ともすると歌の味わいを消し去りそうになりますけれど、キャスリーンの少しハスキーな声で歌うと、
田舎のお母さんが子どもに歌っている子守唄のような素朴な味を醸し出します。

スコットランドの人々の記憶に残されてきたメロディを紡ぐように歌うキャスリーンの歌い口は、
伝統歌手の一つのありかたを示しているように思え、その飾らない歌唱はとても魅力的です。

またこのアルバムは、曲ごとによく吟味された楽器を配していて、
音数少なめながら、キャスリーンの歌と伝統歌のメロディを最高に引き立てているんですね。
無伴奏で歌い始め、しばらくするとトロンボーンがドローンのように吹かれ、
やがてブラスが加わる5曲目のアレンジも巧みなら、
ベラ・フレック(!)が弾くバンジョーのみの伴奏で女性コーラスと掛け合う、
ワークソングをメドレーで歌った8曲目も聴きものです。

スコティッシュ・ゲール語の歌詞と英語訳の歌詞を半々に収録したライナーは、
向きを変えて裏返せば、英語訳版の側にも表紙(写真右)が付いていて、
お好みで表紙を選べる趣向になっています。

秋空とガーリック・ソング、この季節にもってこいのアルバムです。

Kathleen MacInnes "CILLE BHRÌDE" Kathleen MacInnes KMAC001 (2012)
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