黒海の月明かりに照らされて メフタップ・デミル [西アジア]
メフタップ・デミルは、トルコの女性歌手。
「月光のデミル」とはまた、なんてロマンティックな芸名なんでしょうか。
チュルキュレリン・センフォニシの歌手として活躍してきたデミルの、
満を持してのソロ・デビュー作です。
タイトルもその名前にちなんで『月の光に語って』とあるとおり、
詩情豊かなオリエンタル浪漫あふれるアルバムに仕上がっています。
デミルは幼い頃からアナトリア民謡を学び、民族音楽学の学位も持つ、
才色兼備な歌手にしてケマン奏者。
このアルバムでもアナトリアの伝統に拠った自作曲に、黒海沿岸民謡はじめ、
アゼルバイジャン、マケドニア、ウィグルの民謡を取り上げています。
西アジアや中央アジアのフォークロアにも通じたデミルならではのレパートリーですが、
フェミニンな歌い口がまた美味。ハルク歌手にありがちな、しつこくメリスマを利かせることもなく、
さらりとこぶしを回しながら、情の深さが伝わってくるところなど、ゾクゾクしますねえ。
伝統楽器を中心としたアンサンブルがまた聴きもの。
ケマン、バグラマー、カーヌーンなどの弦に、
ズルナ、ネイ、ドゥドゥク、クラリネットの管の響きの美しさといったら。
アルバム冒頭の30秒でトロけること、保証しますよ。
アゼルバイジャン民謡では、アゼルバイジャンのアコーディオン、ガルモンも弾いています。
多彩なレパートリーの持ち味を引き出したアレンジも鮮やかで、
タンゴ、ライカ、ジプシーの香りも楽しめる贅沢さ。
どんぶらこ、どんぶらこと、小舟をこぐようなゆったりとしたリズムで、
平面太鼓の乾いた響きがルバーナを想わす曲では、
ムラユを聴いているような錯覚さえ覚えます。
黒海の月明かりに照らされて揺れる水面を、そのまま音楽にしたようなアルバムです。
Mehtap Demir "SÖYLE MEHTAP" Akustik Müzik no number (2012)
2013-03-17 00:00
コメント(2)
才色兼備の歌姫かぁ~。
もし、輪廻と言うのが本当だったら、俺は今度はトルコに生まれてみたいですね。
月というとイスラムの象徴ですね。
まあ、溜息混じりに探した動画に見とれる俺でした。
おぎ爺
by おぎてつ (2013-03-20 01:50)
生まれ変わりの地に、トルコというのはいいかも。
もしかして、前世や前々世でトルコにいたんだったりして!?
異国の音楽なのに、なんでこんなに魂ゆさぶられるのかと思うとき、
そんな妄想をしてしまいますね。
by bunboni (2013-03-20 11:19)