アルメニア・ポップスの会心作 ナナ [西アジア]
アルメニアン・ポップって、しばらく聴いてなかったなあ。
ここのところトルコやアラブの古典歌謡の良作が続き、
生音アンサンブルの蕩けるような美しさに魅入られていたこともあって、
打ち込みをベースにしたポップスを耳にする気にならなくなってたのも正直なところ。
でも、まあ、そういうアーティスティックな音楽とは対極の、
通俗な大衆味こそがアルメニアン・ポップスの醍醐味なので、
求めるものが違うってことなんですけどね。
で、ひさびさのアルメニア・ポップスなんですが、
中堅女性シンガー、ナナの新作が会心の内容でした。
ちょと古臭い言い方をすれば、バリバリのエスノ・ポップって感じ。
疾走する打ち込みのビート感がグルーヴィーで、実に爽快なんですよ。
パキパキしたリズムが、ジャストで打ち込まれる感覚が快感です。
一歩間違えれば、デリカシーに欠けるチープなプロダクションとなるところを、
ぎりぎり踏みとどまって、アゲアゲ感をうまく演出しています。
ナナは04年にデビューした女性シンガーで、これが6作目とのこと。
クセのないヴォーカルで伸びやかな歌いぶりを聞かせ、
万人向けの親しみやすいポップ・シンガーといったところでしょうか。
特に強い個性は感じさせませんが、
ピチピチとしたサウンドにナナのヴォーカルがよく映えます。
サウンドのカナメとなっているのは、ガルモンとドゥドゥク。
どちらも耳をつんざくような音色を響かせ、強烈なアルメニア臭を撒き散らしています。
ところが、クレジットにはどういうわけか、ガルモンやドゥドゥクの文字がありません。
どうやらこのアルバムで演奏されているのは、
ガルモンの音色を真似たシンセと、ドゥドゥクのように聞こえるクラリネットのようです。
アルメニア人の手にかかれば、クラリネットもドゥドゥクのように、
かすれた響きで泣かせることができるんですねえ。
全18曲、収録時間79分超と、ちょっと詰め込みすぎの感はありますが、
8人ものアレンジャーを迎え、あの手この手でアルメニアの民俗性を盛り込んだ快作です。
Nana "SIRAHARVEL EM" Hamik G. Music PRCD14291 (2013)
2013-03-21 00:00
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