歌うギター 内田勘太郎 [日本]
エルモア・ジェイムズのケント盤をもじったジャケットに、こりゃ買いだと思いましたね。
ぼくの大・大・大好きなアクースティック・ギタリスト、内田勘太郎の新作。
レーベルがタワーレコードというので、仕事の帰りがけに買っていこうと、
新宿のタワレコへ寄ってたんですが、いつ行っても在庫がないんですよ。
自社レーベルの新作だというのに、面出しどころか1枚の在庫もないって、どゆこと?
ひと月待っても一向に入荷してこないので、あきらめてディスクユニオンで買っちゃいました。
内田勘太郎とは古いお付き合い。
高校二年の時に憂歌団の東京初コンサートで観て、いっぺんでファンになり、
ロフトや日比谷野音などに、足繁く通ったもんです。
漫才コンビみたいな木村充揮と内田勘太郎のやりとりは、ライヴでしか味わえない醍醐味でした。
「嫌んなった」の木村の強烈なヴォーカルは何度聴いても胸をすく思いがしたし、
「パチンコ」や「君といつまでも」には毎回大笑いさせられました。
憂歌団ほど喜怒哀楽豊かで、ペーソスに富んだバンドは、ほかにありませんでした。
木村の歌とともに魅力だったのが、勘太郎さんの雄弁なスライド・ギターで、
まさに「ギターが歌う」という形容がぴったり。
正直、ぼくはこの人のギターを聴いて、こりゃかなわん、とギターを挫折したんでした。
当時お手本にしたアクースティックのブルース・ギタリストに、
ライ・クーダーやデヴィッド・ブロムバーグやステファン・グロスマンがいましたけれど、
勘太郎さんのギターは、その3人と根本的に違うサムシングがありましたね。
ブルース求道的なタイプとひと味違う勘太郎さんの個性はとても真似ができず、
白旗上げるしかなかったんです。
ステージで勘太郎さんが曲の間に、手慰みといった感じで、
ぱらぱらっと弾くギターのフレージングがすごく色っぽくて、
それを聴けるのも憂歌団のライヴの楽しみの一つだったんですよね。
テディ・バンを思わすジャズぽいフレーズが、すごくカッコよくってねえ。
勘太郎さんがギターを弾くのをいつまでたってもやめず、次の曲にいけずに困り果てた木村が、
「か、かんたろ…、い、いこか」とオドオド言う姿なんて、今も目に浮かびます。
そんな歌うギターの集大成といった感じのこの新作、
デビュー当時から変わらないエルモア調のスライドはすっかり熟成して、
より深いニュアンスがこもっています。
その一方で、憂歌団の頃には聴くことのできなかった、
スラック・キー・ギターにも似た味わいのフィンガー・ピッキングなど、
オープン・チューニングの世界をさらに広げています。
大人になったギター小僧が、その深めた内面をプレイに響かせた傑作、
タワーレコードさん、しっかり売ってください。
内田勘太郎 「DES’E MY BLUES」 タワー TRJC1033 (2014)
2014-07-18 00:00
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