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モーリタニアのグリオが奏でるアフロ・アラブ音楽 [西アフリカ]

Musique Maure.jpg

この前、西サハラのグループ・ドゥーウェイを取り上げた時、
モーリタニアのグリオが演奏するムーア音楽について触れましたけれど、
ムーア音楽の名盤で忘れられないのが、フランスのオコラから出た"MUSIQUE MAURE" です。

初期のオコラ盤だけにみられた、布貼りの装丁に金文字で刻印した豪華ジャケットで、
見開きジャケット内には、仏・英文の解説と写真がたっぷりと載ったページが付いています。
ぼくがアフリカの民俗音楽を聴き始めた大学生時代には、
すでに通常ジャケットの再発盤しかなかったので、
80年代半ば頃だったか、銀座のヤマハで布貼りのオリジナル盤を見つけた時は嬉しかったなあ。
クラシックのフロアにあった民俗音楽のコーナーに、
突然オコラのオリジナル盤がずらっと並んだことがあって、
驚喜してこのレコードや、ドゴン、セネガルのグリオ、マダガスカルの初期盤を買ったんでした。
あれはいったいなんだったんだろう。倉庫から掘り出したものだったのかな。

いけね、話が脱線しちゃいました。
そのオコラ盤で知ったモーリタニアのムーア音楽は、最初なんとも不思議に聞こえました。
サビの利いた粗削りな歌はいかにもアフリカぽく聞こえるんですけれど、
弦楽器のモーダルなフレージングは、アラブぽいというか、インドぽいというか。
そう聞こえたのもあながちハズレではなく、アラブ音楽のマカームやインド音楽のラーガに匹敵する、
ブハールという旋法(モード)を、ムーア音楽が持っていたからだということを英文解説で知りました。

Prophet 20  Griots De Mauritanie.jpg

フランスの民族音楽学者シャルル・デュヴェーユが
65年にフィールド・レコーディングしたこのLPは、のちに未発表録音を加えてCD化されています。
LPでは短く編集されていた、砂漠の宿営地のテント内で男女9人のグリオが催した演奏会は、
たっぷり38分という長さになって、その熱演をじっくり楽しむことができます。
そのグリオたちの演奏会は、モードを決めるための器楽の前奏に始まり、
やがてモードが決まると歌と合奏に入り、リズムを強調した演奏、
独唱、コール・アンド・レスポンスと、実に変化に富んだ構成となっていて、
飽きさせるヒマを与えません。

Prophet 29  Musique Maure.jpg

一方、2人の男性グリオによる弦楽器ティディニートの弾き語りを収録したCDでは、
ムーア古典音楽の旋法ブハールで大きく二つに大別される、
ブヤード(白)とクハール(黒)という2つのモードの演奏例を聴くことができます。
アリ・ウルド・メイダが黒のブハールを用いた65年録音の7曲と、
LP未収録のモクタール・ウルド・メイダが白のブハールを用いた、
69年録音の28分を超す長尺の1曲が収録されているんですけれど、
ティディニートの表現力豊かな演奏と、滋味に富む味わい深い吟唱は絶品です。

こうして聴いてみると、モーダルな響きに支配されたムーア音楽とは、
アフロ・アラブ音楽だということを実感します。

[LP] Sidi Ahmed El Bakay Ould Awa, Ahmedou Ould Meïddah "MUSIQUE MAURE" Ocora OCR28 (1970)
Par Ahmedou Ould Meïddah Et Les Musiciens De L’Émir Du Trarza and others "PROPHET 20 : GRIOTS DE MAURITANIE" Kora Sons/Philips 464496-2
Ely Ould Meïddah, Moktar Ould Meïddah "PROPHET 29 : MUSIQUE MAURE" Kora Sons/Philips 468455-2
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