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難民となった大学生バンド ソンゴイ・ブルース [西アフリカ]

Songhoy Blues.jpg

アルバム・タイトルかと思っちゃいました。
「ソンゴイ・ブルース」。なんとグループ名とはねえ。
西アフリカの音楽に親しんでいるファンには、ぐっとくるネーミングです。

ここ最近、ソンガイ・ポップについては、日本でもすっかりおなじみのものとなりました。
ニジェール川流域のマリ、ニジェールの二国にまたがって暮らすソンガイ人は、
ソンゴイ、ソンライの名でも呼ばれますが、一般的にはソンガイで知られています。
ソンガイ人で「ブルース」とくれば、すぐにピンとくるのは、
世界的に有名になったアリ・ファルカ・トゥーレでしょうね。
ぼくはアリをまったく評価していませんが、
アリのおかげでソンガイの音楽に目が向けられるようになったのであれば、
それは功績といえます。

とってつけた不自然なプルースぽさを生涯拭えなかったアリは、
歌手としても音楽家としても、高い才能があったとは言い難く、
世界的な成功が過大評価につながった人でした。
むしろアリの後輩にあたる
シディ・トゥーレやアフェル・ボクーム、サンバ・トゥーレたちが、
ソンガイ音楽の持つブルージーな感覚と北米ブルースを柔軟に結びつけ、
トゥアレグ人のデザート・ブルースとはまた違った味を持つ、
ソンガイ(ソンゴイ/ソンライ)ブルースを生み出したといえます。

そんなグループのひとつ、ソンゴイ・ブルースは、バマコの大学在学中に北部紛争が勃発し、
故郷を失い難民となってしまったソンガイ人3人を中心に結成されたグループです。
歌手のアリウ・トゥーレとベースのウマール・トゥーレ(同じ姓でも血縁関係はない)は、
現在もアンサル・ディーンの支配下にあり、
北部紛争の拠点ともなった、ガオの出身者だそうです。

バマコへ出て大学生活を送っていたら、突然難民となってしまったという苦境が、
彼らを音楽へと向かわせたそうで、
彼らの演奏からブルース衝動がびんびんと伝わってくるのも、
そんな彼らの切迫した事情があってこそなのですね。
ソンガイ・ポップにはどこかもっさりした味もあるんですけれど、
ここではトゥアレグのデザート・ブルースに劣らぬ切れ味鋭い、
若々しくパッションあふれるサウンドを聞かせてくれます。

バック・インレイのクレジットを眺めると、どういうご縁なのか、
プロデュースとギターに、オルタナ・ロック・バンド、
ヤー・ヤー・ヤーズのニック・ジナーが参加しているほか、
アフリカ音楽にご執心のデイモン・アルバーンの名が見えます。

ロック・ファンへアピールするには都合の良さそうな面々ですが、
そんな名前など笑顔で無視して、ハイラ・アルビーとアマドゥ・バガヨコに、
おおっと目がとまるのが、正しきアフリカン・ポップス・ファンの姿というものでしょう。
ハイラ・アルビーはソンガイのアリサ・フランクリン、
アマドゥ&アマリムのアマドゥ・バガヨコは、
バンバラ・ブルースの名ギタリストであります。

ソンガイ・ポップはブルージーなものばかりでなく、
日本の民謡のようなほっこりと心温まる曲も多くあるので、
トゥアレグのデザート・ブルースといっしょくたにされるのは、少し抵抗もおぼえますが、
とにもかくにも歌うべき理由がある、ソンゴイ・ブルースのデビュー作、全面支持します。

【追記情報】松山晋也さんから、以下の情報を教えていただきました。
「デイモン・アルバーン やヤー・ヤー・ヤーズのニッ ク・ジナーは、
アルバーンのプロジェクト〈Africa Express〉の流れですね。同プロジェクトが
2013年に出した1作目『 Africa Express Presents: Maison Des Jeunes』に、
ソンゴイ・ボーイズも参加してました。
今回のデビュー・アルバムのオープニング曲「 Soubour 」が収録されてます。」
松山さん、ありがとうございました。

Songhoy Blues "MUSIC IN EXILE" Transgressive TRANS192 (2015)
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