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カーボ・ヴェルデの乾いた情感 ルーラ [西アフリカ]

Lura  HERANÇA.jpg

すっかり島の娘になりましたねえ。
リズボン生まれのルーラですけれど、
前作でカーボ・ヴェルデ人としての立ち位置を明確にして、
アフロ・ズークのポップ・シンガーというイメージを完全に払拭しました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-10-01

「遺産」と題した新作は、前作の路線を踏襲した作品となっています。
柔らかな生音のテクスチャで覆われたまろやかなサウンドで、
カーボ・ヴェルデのさまざまなリズムを響かせています。
今回は、フナナーに印象的な曲が多いかな。
前作が作品としては素晴らしくても、あまりに地味な作りだったので、
今回はさまざまなゲストを呼んで、注目を集めようとしているみたいです。

嬉しかったのが、リシャール・ボナの参加。
ふんわりした手触りのサウンドが持ち味のボナとの相性は、ばっちりですね。
曲も二人の共作で、心あたたまる作品に仕上がりました。
一方、「遺産」というタイトル曲での、ナナ・ヴァスコンセロスとの共演は疑問。
ゴングとパーカッションとヴォイスを多重録音した、
いつものナナらしい実験的なサウンド・メイキングをバックに歌ったものなんですが、
こういう観念的なスピリチュアルふうのトラックで、「遺産」と呼ぶのはいただけないなあ。

せっかくカーボ・ヴェルデのさまざまなリズムやスタイルを取り上げているのに、
アフリカ性もクレオール性も表現しておらず、
妙におどろおどろしい抽象的なサウンドを「遺産」と称しては、まずいんじゃない?
ポップさのないこの1曲だけが、アルバムの中で浮いて聞こえるので、
いっそう違和感を覚えてしまいます。

ほか、レーベル・メイトの新人、エリーダ・アルメイダのデビュー作から、
“Nhu Santiagu” をデュエットしたのは、ルサフリカ側からのリクエストだったのかな。
エリーダの声が好きでないのと、力んで歌う箇所があったりして、
デビュー作同様、ぼくはあまりこの人、買えずです。

というわけで、ボナ以外のゲストの起用は成果を感じませんでしたけれど、
ルーラの情感を抑えたクールな歌いぶりは、今回も染み入ります。
3曲目の“Di Undi Kim Bem” のような哀感に富んだメロディを、
あえて感情を込めず、そっけなく歌うところにグッときますねえ。
諦観を胸の奥底へ静かに沈みこませるような歌。
これこそカーボ・ヴェルデのソダーデでしょう。

Lura "HERANÇA" Lusafrica 762352 (2015)
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