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ナベサダに曲をパクられたタンザニアのロック・バンド サンバースト [東アフリカ]

Sunburst AVE AFRICA.jpg

相も変わらずアフロ・ロックやアフロ・ソウルの駄盤が、リイシューされてますねえ。
最近ではオーストリアのPMGが、
ナイジェリアの70年代ものをせっせとストレートCD化していて、
こんなもん、誰が聴くんだろと呆れてしまいます。
アフロ・ラテン、アフロ・ジャズ、アフロ・ロック、アフロ・ソウル、アフロ・レゲエなど、
クロスオーヴァーしたアフリカン・ポップスはいろいろあれど、
DJ/レア・グルーヴ界隈が掘ってるシロモノは、物珍しさだけのクズ盤ばかり。

そんななかで、これは面白いと耳が反応したのが、タンザニアのサンバーストです。
いわゆるB級ものですけれど、このバンドにはB級なりの良さがあります。
73~76年というごく短い期間しか活動しなかったバンドで、
シングル、LPの全録音をコンプリートに収めたばかりでなく、
ラジオ・タンザニアに残した未発表録音を発掘した編集盤となっています。
さすがはストラット、いい仕事していますねえ。

楽曲クレジットばっちり、バンドのバイオグラフィもしっかりと載せた解説は充実していて、
こうじゃなきゃ、リイシューする意味はないですよ。
ジャケットをコピーしただけのCDリイシューをしているDJ/辺境マニア向けレーベルは、
ストラットの足元にも及びませんね。少しは見習いなさいよ、ほんとに。

67年のアルーシャ宣言によって社会主義(ウジャマー)路線をとったタンザニアは、
自国の伝統文化に根差した音楽を奨励し、ロックやソウルなどの西洋音楽を排除したことから、
サンバーストのようなアフロ・ロックのバンドは、アンダーグラウンドな存在でした。
76年のゆいいつのLPも、ザンビアでザンロックをやっていたリッキ・イリロンガと出会い、
ケニヤのアフロ・ソウル・バンド、マタタとの合同ツアーを経て、
ルサカで録音したザンビア盤だったんですね。

解説を読んでいて、あらら、と驚かされたのが、
渡辺貞夫がサンバーストの曲を盗用していたという指摘。
75年モントルー・ジャズ・フェスティバルに渡辺貞夫が出演した際のライヴ
『SWISS AIR』に収録された“Pagamoyo”(“Bagamoyo”の誤記)は、
サンバーストのシングル曲“Enzi Za Utumwani” と同曲だとのこと。
フェイド・アウトで完奏せず、ファンの間で惜しまれていた曲ですけれど、
あの曲がまさか盗用だったとは、知りませんでしたねえ。

サンバーストのザンビア人歌手ジェームズ・ンプンゴの作曲者名はどこにもなく、
改題されて「Traditional」とクレジットされているのだから、これは言い逃れできないでしょう。
この曲はのちに、81年作『ORANGE EXPRESS』でも“Bagamoyo/Zanzibar” として再演され、
このアルバムはビルボードのジャズ・チャートでベスト・セラーに上ったにもかかわらず、
サンバーストは一銭も得ていないと、ライナーノーツで厳しく指摘しています。

70年代の初め、ナベサダは何度も東アフリカを訪問していたから、
その時にケニヤRCAから出ていたサンバーストのシングル盤を入手したんだろうなあ。
大のアフリカ好きだったナベサダは、アフリカをモチーフにした曲を多く書いていましたけれど、
盗用曲があったとは、ちょっと見損なっちゃたなあ。
それにしても、よく調べたもんです。
ヘヴィー・リスナーのDJだからこその発見といえますねえ。

丹念な調査も音楽を愛するからこそ。
音楽と音楽家に対する共感とリスペクトの精神がにじみ出た、リイシュー力作です。

Sunburst "AVE AFRICA" Strut STRUT128CD
コメント(4) 

コメント 4

としま

えぇ〜っ、貞夫のさんの『スイス・エア』ラストのあれ、盗作だったんですか・・・。あれも、『オレンジ・エクスプレス』で「ザンジバル」と合わせての再演も、大好きだったのになあ〜、う〜ん・・・。『オレンジ・エクスプレス』には「ムバリ・アフリカ」もありますが。

貞夫さんにおけるアフリカとかブラジルとかは、僕がまだなにも知らなかった頃から、その音楽のなんとなくの香りみたいなものを感じさせてくれていたものですから、大恩人なんですけれど。
by としま (2016-07-31 11:27) 

bunboni

自作にしたわけじゃないので、盗作とはいえないまでも、タイトル変えてTraditional とクレジットしちゃったのは、盗用のそしりは免れませんねえ。貞夫さん自身か、マネジメント・サイドの不手際か、わかりませんが。

貞夫さんの『KENYA YA AFRICA』(73)も、いつになったらCD化されることやら。
by bunboni (2016-07-31 11:55) 

ペイ爺

この記事で思い出したんですが、70年代半ばナベサダは、NHKにオペラ歌手の岡村喬生と一緒に出演、アフリカで撮った(内藤忠行に撮られた?)写真について語り、最後にアフリカをモチーフにした曲を二人で歌う(ナベサダは歌うというより、岡村にマイクを向けられて、呟く、囁く感じ)という番組がありました。なんせ家庭用ヴィデオが無い時代なので、記憶はおぼろげで、正確ではないかもしれませんが…。うーん、ちょっとショックですね。ナベサダは好きですし、“ORANGE EXPRESS”で一番好きな曲だったんで…。確かに“Adaptation by Sadao Watanabe from African folksong Traditional”って書いてありますね。
by ペイ爺 (2016-08-01 22:43) 

bunboni

その番組だったかどうか、不確かですけれど、やっぱりNHKにナベサダと岡村喬生が出演していて、「マライカ」をやったのを覚えています。オペラ歌手の歌う「マライカ」なんぞ、おぞましいというか、愛らしいメロディも台無しで、企画がサイテーでしたねえ。
ナベサダが“MY DEAR LIFE”(77) で演奏した“Malaika” は、ソロでもジャズ的な崩しをせずに吹いていて、アフリカ音楽愛に溢れた演奏となっていて、すごく嬉しかったです。
by bunboni (2016-08-01 23:08) 

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