SSブログ

ニュー・ボトル・オールド・ワイン ニュー・マサダ・カルテット [北アメリカ]

John Zorn  NEW MASADA QUARTET VOL.2.jpg

ジョン・ゾーンくらい、ジャズというジャンルを飛び越えて
多角的な音楽性を発揮する音楽家もいないですよね。
ジョンが日本で活動していた80年代には、ライヴに通ったこともあるんだけど、
CDとなると自分でも意外なほど持っていないんだよなあ。
特にコブラなんて、CDで聴いたって面白くないから、ライヴを観に行ってたんだし。
コブラは聴くものじゃなくて、観るもんだって。もっと言えば、参加するものか。

大友良英がMCを務めるNHK-FMの「ジャズ・トゥナイト」で昨年11月、
ジョン・ゾーン特集をやるというので、
自分の知らないレコードがいっぱい聴けるかと期待したら、
意外にもよく知ってるレコードばかりかかったのでした。
ジョンのレコードは大量で、ごく一部をつまみ食いしてるにすぎないんだけど、
大友と趣味が一致してるのかも。

聞いたことがなかったのは、のっけにかかったニュー・マサダ・カルテット。
これがいきなりカッコイイ!
かつてのマサダから、トランペットをギターに変えて新たに始動した
ニュー・マサダ・カルテットは、第1作を聴いてガッカリしてただけに、
2作目となる新作のカッコよさは意外でした。

ニュー・マサダ・カルテットの第1作にがっくりきたのは、
クレズマーとオーネット・コールマンというコンセプトがすっかり消えていた点。
これじゃマサダじゃないじゃんねえ。
これに落胆して2作目をスルーしちゃったんだけど、マサダという看板を外して聴けば、
ジュリアン・ラージとジョン・ゾーンという組み合わせは刺激的で、スリル満点。

2管だったマサダから1管となり、ジョンと音域の違うギターが参加することで
ハーモニーが豊かとなって、バックの厚みが増しましたね。
それが如実に表れているのが、マサダおなじみのナンバー、
‘Idalah-Abal’ や ‘Abidan’。
‘Idalah-Abal’ は94年のマサダ第1作目 “ALEF”、
‘Abidan’ は95年のマサダ第3作目 “GIMEL” 初出の曲で、
その後に何度も演奏されていますけれど、
ジュリアン・ラージの存在感が大きくて、サウンドに広がりが出ました。

ジョン・ゾーンの雄叫びの鋭さは衰えていなし、瞬発力も切れ味もある。
ソロが短くなったのは、初期のマサダに戻ったかなという印象があって、
全体には落ち着いた印象かな。もちろん暴れてるところは暴れてるんだけど。
ドラマーがジョーイ・バロンからケニー・ウールセンに交代して、
しなやかなノリとなり、疾走一辺倒となる場面はなくなりました。

やはりジュリアン・ラージを起用したジョンの慧眼が、さすがですね。
マサダでヘブライ旋法をハーモロディックにやって、
調性から離れようとしていたのが、ギターが和声へと還元して、
マサダをまた別次元に連れて行こうとしているじゃないですか。
マサダのブランド名を引き継ぐも、中身は別物というチャレンジングな姿勢に、
まだまだ円熟などと言わせない、ジョンの気概を感じます。

最後に蛇足のボヤキ。
ラジオを聴き終えてソッコー注文したものの、郵便事故でアメリカから届かず、
もう一度送り直してもらって、届くまで二か月半もかかってしまいました。
ラジオで盛り上がった気分もすっかり鮮度が落ちてしまって、ガックリでした。

John Zorn "NEW MASADA QUARTET VOL.2" Tzadik TZ8396 (2023)
コメント(0)