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大恐慌時代のトーチ・ソング メロディ・ガルドー [北アメリカ]

Melody Gardot My One and Only Thrill.JPGごめんなさい。みくびってました、あなたの才能。
いえね、前作“WORRISOME HEART”は聴いてましたよ。
メジャー・デビュー前の自主制作盤
“SOME LESSONS”だって買ったくらいですから、
もちろん注目はしてました。
いまどきの人らしく薄口なのが物足りないけど、
ちょっとジャジーでいいんじゃない、とは思ってました。
でも、そんな程度。
ノラ・ジョーンズよりゃマシだよな、くらいの認識でした。
それが、こんなスケールの大きな作品を作り出すなんて。

「スケールの大きな」って、細部まで神経の行き届いたゴージャスな伴奏のことじゃありません。
メロディのブルージーな声が一気に深みを増したこと。
聴く者をあの世に引き摺りこむような怖れすら覚える、霊性を感じさせる声。
これほど深みのあるトーチ・ソングが、今のアメリカから生まれるなんて、
想像だにしませんでした。

いや、むしろ今のアメリカだからこそ、こんな歌が出てきたんでしょうね。
世界金融恐慌に端を発したアメリカ資本主義の終焉を、
メロディの歌がいみじくも象徴しているようです。
そもそもロマンティックな歌は、裕福な社会からは生まれないものです。
貧しいからこそ、一縷のよすがとして人々に求められ生まれるのが、ロマンティックな歌です。
お伽噺や夢物語が、どん底といっていい貧乏の中から誕生するのと同じですね。
逆に、ロックやフォークで歌われるプロテスト・ソングなんてものは、
貧乏を抜け出してちょっとばかり豊かになった人間が、他人の貧乏を発見して作る歌です。

このアルバムに収められたメロディの歌は、
ぼくには、大恐慌幕開けのトーチ・ソングに聞こえてなりません。

Melody Gardot "MY ONE AND ONLY THRILL" Verve B0012563-02 (2009)
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