お悔やみ グサン・マルトハルトノ [東南アジア]
とうとうグサンさんがお亡くなりになってしまいました。享年92歳。
ここ最近入退院を繰り返しているという話が伝わってきて、
数日前、緊急入院してICUにいるとの報に、覚悟はしていましたが、
訃報はやはり残念でなりません。
手元にグサンさんが99年3月に録音し、
82歳の誕生日の99年10月1日にリリースされた記念アルバムがあります。
これ以降、85歳や88歳のときにも、グサンさんは記念の新録アルバムをリリースされています。
晩年を幸せに過ごされたことが、なによりでした。
グサンさんが作曲した「ブンガワン・ソロ」は、インドネシアを代表するばかりでなく、
20世紀に残されたポピュラー名曲のひとつであることは、誰もがうなずくことと思います。
ぼくは「ブンガワン・ソロ」を初めてギターで弾いた時、
あの独特のメロディーが、ありふれたフツーのコード進行の曲だったことにとても驚きました。
いまでも時折、「メロディー限界説」みたいなことを唱える人がいますけど、
「ブンガワン・ソロ」のコード進行を知った時ほど、
メロディーに限界などないことを痛感したことはありませんでした。
ありふれたポップスのコード進行と変わらないのに、
アメリカやヨーロッパからはぜったいに生まれるはずのない、
インドネシアらしい情緒に溢れたメロディー。
さまざまな文化土壌から、思ってもみなかったメロディーがこれからも生まれ得ることを、
ぼくは「ブンガワン・ソロ」から学んだように思います。
素直に人の心になじみ、誰もが口ずさめる「ブンガワン・ソロ」のような曲を、
一生に一曲でも書けたならと、作曲家なら嫉妬せずにはおれないでしょうね。
そんな「ブンガワン・ソロ」のいろいろな歌手たちによるヴァージョンを、
今度聴き比べてみようかなと思っています。
Gesang "CAMPURSARI" Gema Nada Pertiwi CMNP276 (1999)
2010-05-22 00:25
コメント(4)
ブンガワン・ソロの様な曲を作るのは僕も夢に見る様な事です。
「君が代」のメロディーなど聴いていても、東アジアの旋律にはまだまだ果てしない可能性がある様な気がしてならないです。
「メロディー限界説」なんて、「著作権」等の権利商売の約束事に身を滅ぼした音楽家の泣き言じゃないでしょうか。
本来、歌は模倣や内容の重複を繰り返して磨かれて来たものである事はどこの民族音楽を聴いても明らかです。
人々の日常と、土地や風土に磨かれて、ある日誰か一人の口をついて出た一つ節目の答えの様なもの。ブンガワン・ソロもそんな曲なのだと思います。
グサン・マルトハルトノさんのご冥福を祈ると同時に、彼の才能を育んだ文化への敬意を新たにしたく思います。
by たくと (2010-05-23 04:29)
真摯に音楽と向き合っている音楽家の逞しい言葉に、感激です。
すばらしいコメント、ありがとうございました。
by bunboni (2010-05-23 09:57)
今日はおつかれさまでした。話したのはこれです。
コンゴのラッパーBALOJI。Konono N°1ともやっていた。 http://www.youtube.com/watch?v=SfunS_xZK0M
GRAND KALLE ET L'AFRICAN JAZZの60年の曲「INDEPENDANCE CHA-CHA」を演奏する年寄りたちをバックに、Balojiというラッパーが絡んだ最近の映像。
http://www.youtube.com/watch?v=DeEIGYnpyHs&feature=player_embedded
by 石田まさたか (2010-05-23 22:49)
さっそくありがとうございます。
あの「独立チャチャ」がどんな仕上がりになるのか、楽しみです。
今日のイヴェントについては、また数時間後にアップします。
by bunboni (2010-05-23 22:55)