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エトンの森から サリィ・ニョロ [中部アフリカ]

Sally Nyolo.JPG

サリィ・ニョロって、すごいな。
ザップ・ママを抜けてからの彼女のソロ活動は、ブレがないというか、ゆるぎがないというか、
自分のやるべきことをわかっている人の確かさを感じさせます。
クオリティの高い作品を作り続ける一方で、
母国カメルーンの若手アーティストの育成にも力を入れていて、
サリィぐらい足下確かに活動しているアフリカのアーティストも、数少ないんじゃないでしょうか。

サリィが一貫してやっているのは、カメルーン南部の伝統音楽ビクツィをベースに、
ピグミーのコーラスなど彼女のルーツに繋がる、
さまざまな伝統の要素を織り上げたポップスを作り出すことですね。
彼女のアルバムは、アンサンブルやアレンジのすみずみまで
繊細な神経が行き届いていて、いつも感心させられます。
凡庸なアイディアの借用や安易なミクスチャーなど、ぜったい出てこないですもんね。
よく練られたプロダクションながら、がっちり作りこんだような窮屈さもなく、
しなやかなサウンドを生み出すところに、サリィの柔軟な才能が示されています。

新作は、母国カメルーンのヤウンデにサリィが設立したスタジオや現在暮らしているノルマンディー、
さらにパリ、ブリュッセルでレコーディングを行っています。
メジャーへ移籍しても、サリィのスタンスは以前と変わりなく、
むしろヒット性とは無縁なアーティストなのに、ソニーがよく契約したものだと思いました。

今回新たな試みとして、子供時代にカメルーン南部のエトンの森でよく聴いたという、
ベティ人の木琴メンドザングを取り上げているところが注目されます。
そのメンドザングの演奏に始まり、アコーディオン、サックスなどが加わって
ビクツィのダンス・チューンへとなだれ込んでいく“Owé” が、アルバム最大のハイライトでしょう。

ポップなレゲエのサウンドで、ピグミーの笛ヒンデウフーをさりげなく聞かせたり、
小型のハープとおぼしき素朴な響きの民俗楽器と女声コーラスの反復による曲で、
サウンド・エフェクトをカクシ味に効かせるデリケイトな手さばきも、さすがです。
アルバムのラストをピグミーのコーラスで締め括ったところも、サリィらしくっていなあ。
カメルーン南部ギネア湾沿岸のリゾート地クリビにほど近い、
密林に暮らすロベのピグミーを取材したようです。

最後に蛇足ぽい話になりますけど、おやと思ったのが、
最近プロジェクトで共演しているサックス奏者デヴィッド・マレイ作曲の“Stolen By Night”。
イントロから曲全体のムードまで、ダン・ヒックスの“I Scare Myself” そっくりなんですね、これが。
まさかサリィがダン・ヒックスの曲を知ってるとは思えませんが、
あまりにも似ているので、何度聴いても不思議な空耳感が残ります。

Sally Nyolo "LA NUIT À FÉBÉ" RCA Victor/Sony Music 88697915062 (2011)
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