SSブログ

赤毛娘が歌うブルース ボニー・レイット [北アメリカ]

Bonnie Raitt  Warner Bros..JPG   Bonnie Raitt  THE LOST BROADCAST  PHILADELPHIA 1972.JPG

ボニー・レイットの代表作といえば、72年のセカンド作“GIVE IT UP”。
その定評になんの異論もありませんが、
ボニー・レイットをファーストから順に聴いてきた者にとっては、
71年のファースト“BONNIE RAITT” がもっとも忘れがたく、一番愛着があります。
戦前のカントリー・ブルースにはまり、白人の歌うホワイト・ブルースなんか聴けるかいと、
本物志向で生意気盛りだった高校生時分に、
ゆいいつ好きだったのが、ボニー・レイットのファーストでした。

この“BONNIE RAITT” では、ロバート・ジョンソンの“Walking Blues” や
トミー・ジョンソンの“Big Road” というデルタ・ブルースの大名曲を真正面から取り上げていて、
ハタチそこそこの赤毛娘が歌うなんざ、無謀な選曲と思いきや、
これが不思議なくらい、素直に聞けるヴァージョンに仕上がっているんですね。
その秘密は、ボニーが無理にブルースぽく歌おうとせず、自然体のまま歌っているからで、
か細い白人フォーク・シンガー丸出しの声が、かえって新鮮に聴けるのでした。

ホワイト・ブルースがイヤになるのは、無理にブルースぽくしようと声をツブしてみたり、
がなった歌い方をしたりと、やたらと作為が目立つ不自然さがあるからなんですね。
そんなブルース理解では、ブルース以前にロクな音楽ができないことは自明なんですけど、
非黒人が黒人音楽をやろうとする時に、どうしても陥りやすい落とし穴ともいえます。

当時のインタビューでボニーは、「ジョー・アン・ケリーやメイヴィス・ステイプルの様な声があれば」と、
自分の声がブルース向きでないことを吐露していましたけれど、
「どうせアタシの声じゃ、ダウンホームなブルースになりっこないんだから」とばかりに
開き直った(?)のが幸いして、スウィートな歌い口が、かえって魅力となっています。

そんなスウィートでキュートな歌い口のボニーが歌うレパートリーといえば、
やはりフォーク・ナンバーがぴったりで、自作の“Thank You”や
ポール・シーベルの“Any Day Woman” といった
スロー・ナンバーでのこぼれる女心にぐっときます。
もうひとつ、ぼくがこのファーストが好きなのは、
“Women Be Wise” や“Mighty Tight Woman” といった女性の自立を歌った曲で、
フェミニズム的なテーマの曲を歌っても、やたらと勇ましくなったりはせず、
柔らかでしなやかさを失わないところに、ぼくは魅力を覚えます。

そんなファーストを偏愛するぼくにとっては嬉しい、ボニーの未発表ライヴが出ました。
72年2月22日、フィラデルフィアのFMラジオWMMRでレコーディングしたライヴ・アルバムです。
デビュー・アルバム発売後のプロモーション・ライヴだったようで、
“BONNIE RAITT” 全11曲中9曲と、アルバムのほとんどの曲を歌っているんですね。
“BONNIE RAITT” では、ジュニア・ウェルズ、バディ・ガイ、A・C・リードといった、
シカゴのツワモノたちも参加した贅沢なレコーディングとなっていましたが、
このライヴでは、盟友フリーボのベースに、ブルース・ハープのジョン・デイヴィス、
ギターのT・J・ティンドルとともに、ボニーの凄腕ブルース・ギターがうなりをあげています。

曲間のMCを聞いていると、ボニーはとてもデビューしたての22歳とは思えない落ち着きぶりで、
緊張もみせず、ア、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッと楽しそうに爆笑したりと、
すっかりリラックスした様子でステージを進めていて、貫禄のライヴ・パフォーマンスを楽しめます。

Bonnie Raitt "BONNIE RAITT" Warner Bros. 1953-2 (1971)
Bonnie Raitt "THE LOST BROADCAST : PHILADELPHIA 1972" Leftfield Media LFMCD502
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。