イングランドの詩をスケッチして ヒラリー・ジェイムズ [ブリテン諸島]
イングランドから、とびっきり清らかで気品のあるトラッド作が届きました。
これがソロ5作目となるヒラリー・ジェイムズの新作です。
イングリッシュ・トラッドの女性シンガーというと、
ジューン・テイバーやフランキー・アームストロングといった、
パワフルで重みのある歌手たちをまず思い浮かべますけど、
ヒラリーはそれとはまったく違った個性の持ち主。
繊細で美しいヒラリーの声は、ぼくにはイングランドというよりスコットランドの歌手を思わせます。
ヒラリーって、それなりのお歳のはずなんですけど、
今年の春登場したエミリー・ポートマン顔負けな、
二十歳代の新人のような美声に驚かされます。
抜けるような秋の青空を想わす清廉な歌声には、ただただ聴き惚れるばかり。
そのピュアな歌声は、シャーリー・コリンズのような素朴さとは別種の洗練を感じさせます。
加えて、ヒラリーの長年のパートナー、サイモン・メイヤーのギターとマンドリンを中心とする、
ヴァイオリン、チェロなどの弦の響きを生かしたアンサンブルも完璧。
やわらかく奥行きのある色味を出す透明水彩のようなサウンドづくりは、
イングランドの四季を詠んだシェイクスピアなどの詩に曲をつけたオリジナルと、
伝承歌とを見事に描いてみせます。
数曲で加わるオーボエが、イングランド特有の哀しみに満ちた旋律を美しく装い、
手回しオルガンのようなパイプ・オルガンの響きも、
イングランドらしいクラシカルな雰囲気を醸し出しています。
ヒラリーの声と楽器の響きをナチュラルに捉え、かつ立体感を持ってふくよかにしあげた
録音も素晴らしく、この秋にぴったりのアルバムです。
Hilary James "ENGLISH SKETCHES" Acoustics CDACS059 (2011)
2011-10-26 00:00
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