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ゆらぐヴェトナムのギター ヴァン・ヴィ [東南アジア]

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世界には変わった形状のギターがいろいろありますけれど、
ヴェトナムのギター・フィムロンくらいユニークなのも珍しいでしょう。
フレットとフレットの間の指板が深くえぐられていて(スキャロップ加工というそうです)、
押弦の強弱により強いヴィブラートやチョーキングと同じ効果を得られるようになっています。
ヴェトナムではダン・バウ(一弦琴)に代表されるとおり、ゆらぐ音を好む傾向があり、
ポルタメントを簡単に出せるよう手を加えたギター・フィムロンは、
まさしくヴェトナム人好みの響きに改良されたギターといえます。

ギター・フィムロンは、キム・シンの演奏で世界的に有名になりましたが、
ぼくがこの楽器に夢中になったのは、ヴァン・ヴィというギタリストのソロ演奏を聴いてからです。
カイルオン系専門レーベルのヴェトナムから出た
カイルオンのインスト演奏コニャックのアルバム(写真左)に、
ヴァン・ヴィのソロ演奏が1曲入っていて、
その独創的でイマジネイティヴなプレイに、ノックアウトをくらったのでした。
ジャケットに写る3人の真ん中、黒サングラスをかけているのがヴァン・ヴィその人です。

ヴァン・ヴィ(本名ディン・ヴァン・ダン)は、29年生まれ。
貧しい家に生まれ、3歳で天然痘にかかり、視力を失いました。
幼い頃から弦楽器が好きで、音楽教師や音楽家に教えを乞うては、
胡弓やギターをマスターしたといいます。
のちにカイルオンの大女優となるウット・バック・ランとは、
幼い頃にコンビを組んで市場やバス停留所などで流しをした仲で、
年長のヴァン・ヴィがウット・バック・ランに歌を教え、二人は流しで貧しい家計を助けたそうです。

その後、町中で評判となった二人は、ラジオやカイルオン劇場など本格的なプロ活動に転じ、
ヴァン・ヴィはギター・フィムロンの名手として、数多くのレコーディングを残しました。
コメディアンのヴァン・フォン(ヴァン・フーン)が、
66年と67年のヴォンコのコンテストで優勝した時の伴奏を務めたのもヴァン・ヴィなら、
ヴァン・ヴィが出演するラジオの伝統音楽番組は、常に人気の的だったといいます。

しかしそんなヴェトナム戦争前のヴァン・ヴィの絶頂期も今は昔で、
ヴァン・ヴィのプレイを聴けるCDを見つけるのは、至難の業。
去年ホーチミンに行った時にも探してみたんですが、
ヴァン・ヴィのギターがフィーチャーされた、
歌もののヴォンコやタンコのCDはいくつかあったものの、
ソロ演奏が入っているコニャックのCDはとうとう見つかりませんでした。
というわけでヴェトナム旅行では成果なしだったんですけど、
なんと日本でヴァン・ヴィのソロ演奏を2曲収録したコニャック集(写真右)が手に入りました。
大阪のプランテーション丸橋店長による買い付け品で、さすがプロのバイヤーは違います。

このアルバムには、ダン・チャン(筝)、ダン・ニー(胡弓)、ダン・キム(月琴)、
ダン・セン(月琴をやや小型にした六角形のボディの2弦琴)、ヴァイオリン、
ギター・フィムロン各楽器のソロやアンサンブルが収録されていますが、
やはり圧巻は、ヴァン・ヴィのギター・フィムロン・ソロ2曲。
それぞれ7分以上を越す長尺サイズの曲を、ヴァン・ヴィはすさまじい集中力で弾ききっていて、
思わず大友良英やビル・フリゼールに聴かせてみたい、なんて感想が浮かんだほど。

ヴァン・ヴィは85年、56歳で生涯を閉じますが、
彼の3人の子供、ヴァン・アン、ヴァン・ハウ、ヴァン・タイは、
いずれも有名なミュージシャンとなって活躍をしているそうです。

Bảy Bá, Vǎn Vĩ, Nǎm Cơ "CUNG THƯƠNG HÒA ĐIỆU" Ðĩa Hát Việt Nam no number
Bảy Bá, Vǎn Vĩ, Nǎm Cơ, Ngọc Sáu, Haì Thơm "HOÀ TẤU VÀ DỘC TẤU : CỔ NHẠC - CẢI LƯƠNG" Saigon Vafaco no number
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