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毒にもクスリにもならない歌 ウシーア [南ヨーロッパ]

Uxia  Meu Canto.JPG

試聴サンプルを十数秒聴いただけで、ピンときました。
ウシーアがどこの誰かも知らぬまま、直感でオーダーしたんですが、
届いた最新作をじっくり聴いてみて、いっぺんでファンになってしまいました。

ウシーアは、スペイン、ガリシアを代表する女性シンガーとのこと。
いやあ、いい歌い手ですねえ。
その声を聴いているだけで、もう涙が出てきそうなくらいで、
こういう素直に心になじむ歌を歌える人が、ぼくはほんとに好きです。

去年のベスト10で、「気取った音楽や俗悪ぶった音楽はもうたくさん」と口走りましたが、
歌で何かを主張するような<クスリ>になるアーティスティックな歌も、
<毒>のある俗悪ぶった歌も、うっとうしいだけなんですよ。
ぼくが聴きたいのは、あらためて考えてみればたわいもないような、そんな歌。
いっそ歌詞のないオノマトペで歌ってくれたら、どれほどスッキリするかてなもんです。

けっきょくぼくは、<毒にもクスリにもならない>歌が好きなんですね。
<毒にもクスリにもならない>とは、もちろんホメ言葉であって、
かつてミゲリート・バルデースが
「つまらない曲を歌いたい」と発言していたことを思い出します。
虚構を異化したドラマ性を曲に込めて歌う、まさにミゲリートならではのセリフですけど、
歌謡というものの真髄がそこにありますね。

えーと、ちょっと話がそれちゃいましたけど、
ウシーアも自意識をひけらかさないタイプの、
<毒にもクスリにもならない>歌を歌える人で、
お母さんの子守唄のようなあったかさイッパイの歌に、
安心して身を預けることができます。

本作は、マリア・ベターニャのギタリスト、
ジャイミ・アレンをプロデューサーに迎えたブラジル録音。
音数をぎりぎりに絞った伴奏は、
ウシーアの歌を引き立てるためだけに奉仕しているかのようで、
アコーディオン、ヴィオーラ・カイピーラ、マンドリナ、
パンデイレッタなどのみずみずしい響きが、
ウシーアの円熟した歌を包み込んでいて、まさに歌と伴奏の理想型が示されています。

自作曲やガリシア民謡のほか、ジョゼ・アフォンソのコインブラ・ファドや
ジョアン・ノゲイラのサンバを歌っていて、
ジョゼ・アフォンソの曲の最後には、カルトーラの歌詞も引用しています。
レニーニが1曲ゲストで参加しているですけど、
こんな穏やかなお父さん声で歌うレニーニは初めて聴きました。

キューバのフィーリンやブラジルの70年代MPBにも通じる、
親しみやすいコンテンポラリー・ポップスにして極上の歌謡音楽が、ここにあります。

Uxía "MEU CANTO" Fol Música 100FOL1052 (2011)
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