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新時代のソマリランド・ロック サハラ・ハルガン [東アフリカ]

Sahra Halgan  HIDDO DHAWR.jpg

ソマリランド出身のサハラ・ハルガンの3作目。
ソマリ音楽の片鱗も感じられなかったデビュー作から一転、
前2作目のローファイなロック・サウンドへの変貌ぶりには驚かされましたが、
新作ではさらにギアを上げたようです。

エチオ・グルーヴやデザート・ブルースに共通する、
ブルージーでディープなロック感覚をソマリ歌謡に持ち込んだ試みは、
ここに完成を見たといえる傑作になりましたね。

前作にはキーボードにオリエンタル・モンド・サウンドの鬼才
グラーム・ムシュニクが参加していましたが、今作はレジス・モンテに交代。
91年にハルガンがフランスへ亡命して以来、
リヨンでともに音楽活動をしてきた仲間の二人、
ドラムスのエメリック・クロールとギターのマエル・サロートは不動です。

エメリック・クロールは、マリの伝統音楽をアップデートするグループ、
ベカオ・カンテットのドラマー。
そしてマエル・サロートは、スイス、ジュネーブのポスト・ロック・バンド、
オルケストル・トゥ・プイサン・マルセル・デュシャンのギタリストです。

ハルガンとエメリック、マエルの3人で制作したデビュー作では、
エメリックとマエルがソマリ音楽を理解していなかったため、
無国籍音楽のような仕上がりになってしまいましたが、
その後ハルガンが、二人にソマリの伝統リズムを仕込んだのでしょう。
前作では、ハルガンのウルレーション(ソマリ語では「マシュハッド」と呼ぶそう)が
効果を上げていたように、ソマリの伝統音楽の要素を前面に押し出し、
ソマリの大衆歌謡カラーミをアップデートしたサウンドも聞かれるようになっていました。

新作はその路線をさらに推し進めて、ソマリのグルーヴをベースに、
多彩なリズムや曲調でサウンドを彩り、そこにギターのダーティなトーンや
ロック・スタイルでパーカッション的なプレイを聞かせるドラムスが、
これまでにないソマリ新時代のワイルドな音楽を生み出しています。

ハラガンの痙攣するヴォーカルが、ヘヴィーなギターにヴィンテージ・サウンドのオルガンと
シンバルの乱打が交錯するオープニングから強烈です。
タイトル曲の ‘Hiddo Dhawr’ なんて、ソマリの民謡ロックそのもの。
なかでも聴きものは、ハルガンがラップする ‘Lamahuran’。
高らかにマニフェストを宣言するかのような ‘Hooyalay’ なんて、
「戦闘員」とアダナされたハルガンの真骨頂じゃないですか。

Sahra Halgan "HIDDO DHAWR" Danaya Music DNA001CD (2024)
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