濃厚なアイリッシュネス シェイマス・ベグリー&オシン・マク・ディアルマダ [ブリテン諸島]
西ケリー出身のアコーディオン奏者兼歌手のシェイマス・ベグリーと、
スライゴー・スタイルのフィドルの名手オシン・マク・ディアルマダとのデュオ作は、
アイリッシュ魂あふれるアイルランド伝統音楽の味わいが、
たっぷりと詰め込まれています。
シェイマスはディングルの広大な牧草地で、100頭もの牛を飼う酪農業を営む農夫。
そんな人がアイルランドを代表するアコーディオン奏者なんだから、
アイルランド音楽が生活といかに不可分かが、よくわかりますね。
音楽産業が肥大化せず、地方にいきいきとした伝統音楽が生命を保っているのが、
アイルランドという国の健康さに思えます。
シェイマスのアコーディオンのウマさといったら、もういやんなっちゃうくらいで、
よく歌うフレージングばかりでなく、
ちょこちょこ顔を出す悪戯小僧のようなおちゃめなコード弾きなど、
シェイマスその人そのものが乗り移ったような演奏ぶりは、憎たらしく思えるほど。
また、シェイマスのおおらかな歌にも引き込まれずにはおれません。
無為な声はほっとするような優しさがあり、
シェイマスの娘がゲストで親子一緒に歌う曲では、
のどかな美しさにしばし浮き世を忘れます。
ついシェイマスのことばっかり書いちゃいましたが、オシンのフィドルもまた芸達者。
どんなレパートリーだろうと鮮やかに弾きこなし、ゆるぎない弓さばきを聞かせます。
二人の息の合った演奏は、アコーディオンとフィドルが一体となったかのようで、
シェイマスがコードを弾かず、右手のメロディだけで弾くパートでは、
まるでひとつの楽器を演奏しているかのように聞こえます。
音楽が骨太で、雄大。
濃厚なアイリッシュネスを堪能できる一枚ですね。
Séamus Begley & Oisín Mac Diarmada "LE CHÉILE" Ceol Productions CPCD002 (2012)
2012-06-04 00:00
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